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葉音~すえなり~3

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   葉音〜すえなり〜
                              B.R. 
 家事は好きでない。
特に料理は苦手だ。
野菜を切るのも魚を焼くのもお肉を煮るのも。
見てるだけで文字通りおなかがいっぱいになる。
周りが口を開けば「女の子なのに」とか。「大切な伴侶ができたらどうするの?」とか。私への心配なのか、当人達の鼓舞なのか。
そんな事ばっかり言われてると、そのうち私の耳はタコで塞がるんじゃないの?
そんなことをグチグチと文句垂れるたびに千布ちゃんは私を台所へ連れて行き包丁を握らせる。
千布ちゃんは料理が得意だ。
旅館のご飯も、私のご飯も、春先に飛んでくる百舌のご飯も、息するみたいに皿に盛り付けちゃう。
食事時になってできる私の仕事はそれを客室ごとに配膳するだけ。
別にむなしいとか悔しいなんて思わない。ただただ素直に感心できる……だからこそ
「こういうのは必要ないと思うのよねぇ」
まな板に寝ている大根にダン!と音を立てて包丁を落とす。
刃物の研ぎは月一で私がやっている。
最初は砥石だけ買ってきて要領も得ず見様見真似でやっていたら沢山の包丁を鋼の棒に変えてしまった。失敗した本数は……まぁ思い出す必要も無いでしょうね。
新しい包丁を買いに町のほうに向かうついでに刃物屋さんにコツを聞きながらコツコツと腕を磨いたのだ。
最初は千布ちゃんに何度も「専門の人に頼んだ方が安く済むんじゃないの?」と笑われたけど、今では私が(刃物研ぎの)専門家だ。
私が研いだ包丁で千布ちゃんが料理を作る。これって平等な協力関係ってやつだよね。
「だからこそ」
 再び野菜を切るにしては大げさな音で自慢の包丁が人参をまな板を叩く。
「いくらお客さんに出す料理じゃないからって」
 大きく振りかぶり包丁を下ろす。
そして皮もむかずに真っ二つにされたジャガイモが料理籠の中に投げ込まれる。
「おかしいんじゃないかしらね」
 ザス!という今までの野菜と少し違った音を立てて白菜を両断する。
「はいはい緑里さんや、そこまでそこまで」
 真っ二つの白菜の片割れを料理籠に移そうとしたところで台所の入り口から声が聞こえてきた。私はとっさに手を止めてしまう。
「あらあら〜意外と早く戻られたのね、お客さんは何の用事だったのかし」
 振り向いたところで千布ちゃんの背中に少し距離を置いて見知らぬ女の子が立っていることに気がついて言葉が詰まる。
 かわいいお客さんじゃない、ご予約は無いですし急な宿泊の方?
女の子はほんの少し青ざめた様子で私のほうを見ながら「あ、あの、え、ええと」と慌てふためいたジェスチャーを行なっていた。
女の子の視線を追いかけると私が切った食材の入った料理籠と真っ二つの白菜と包丁を握った私がいた。
「千布ちゃんその方は……お客さんかしら?」
 私は台所の入り口で動こうとしない女の子に近寄る。台所まで入ってこないところを見るとブラリ旅でもしてる学生さんかしら?なんて今時流行らないわよね。
「って、あれ?あーあなた?」
 私が近寄るのに合わせて女の子は一歩後退する。心無しか表情が強張っている気が。
「あー緑里。あんたには話してなかったことがあるんだけど、その前にちょっと見られちゃ不味いことがね」
「?」
 頭に疑問符を浮かべる私に頬を指で掻きながらゆっくりと近づいてくる千布ちゃん。
近くで見ると小さく汗を流している千布ちゃんは私の手にある白菜と包丁を受け取りながら目を伏せ「うんうん」と小さく頷く。
「あんたの料理風景は相茶ちゃんのハートにはちとキツイ」
 千布ちゃんが相茶と呼ぶ女の子がこの後私の話を聞いてくれるまで長い弁解が必要となった。
やっぱり私は家事が嫌いだ。
作品名:葉音~すえなり~3 作家名:B.R