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葉音~すえなり~5

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   葉音〜すえなり〜
                               B.R.
「さて、そんじゃそろそろ始めましょうかぁ」
 少し遅めになった昼食を終え、汁物が濃いだとか昨夜見た夢の話だったりとか当たり障りの無い会話をしながらダラダラとしていると不意に緑里さんが立ち上がりそう言った。
「あいあい、チャッチャとやっちゃってね」
 緑里さんに合わせるように左近さんも立ち上がる。
私は慌てて緑里さんに尋ねる。
「あの、緑里さん?」
 昼食の合間に聞いた話だと六名ほどの団体(?)のお客さんが前日の夕方にチェックアウトをして帰っていったらしい。
だから今はお客さんが居なくて手が開いててね、なんて話していたのに。
 もちろんお給料を貰って旅館に勤める身なのだから遊んで良い訳は無いのだが。
「なぁに?相茶ちゃん?」
 両腕を上げん〜と大きく伸びをしながら返事をする緑里さん。
呼んではみたものの何と言ったらいいのか、「何かやることあるんですか?」ってのは他人事みたいじゃないか?
緑里さんも左近さんもこれから同じ場所で働く上での先輩だ、ここは率先して「手伝いますよ」かな?
いやいやいや待て待て私。左近さんだって食器の片付けとかあるだろうし、夕ご飯は力入れるよ!なんて言ってたし、むしろここは左近さんの手伝いを……。
でもそれじゃ緑里さんを蔑ろにしてるみたいにも思えるし……。
「(千布ちゃん千布ちゃん!、相茶ちゃん固まっちゃってるんだけど)」
「(なんか色々と考えちゃう子みたいよ、今時珍しい若者って感じよね)」
 ハッ!左近さんと緑里さんが何か小声で話しながらこっちを見ている。
気が利かないわね。なんて思われて、いやいや二方とも優しそうな人ですし考えすぎるのもかえって失礼かもだし。
「あ、えお、あの、スイマセン」
 とりあえず謝る。もうなんか変なこと考えすぎて頭の中真っ白に近い。
「フフッ、じっとしてられないみたいね。だったら緑里の手伝いでもして貰おうかしら?」
 見かねて左近さんが提案をしてくれる。
「そうねそうね、ある意味丁度いいかもしれないし」
「あ、では」
 よろしくお願いしますと言葉を続ける前に緑里さんに手を取られる。
「善は急げ!行っちゃいましょー!」
「ちょ、え」
 緑里さんはそのまま廊下に向けて走り出す。
例えるなら学校の授業が終わって一刻も早く遊びに行きたい小学生の如く。
というか力!力強いです!
私を引きずって、向かうのは……二階?階段!?
「あ、こら!食器運ぶぐらい……って聞こえてないね」
 スイマセン左近さん。今は、今だけはそれどころじゃないんです。
「緑里さん!緑里さーん!」
「心配しないで大丈夫だよ!私がしっかり面倒見るからね!」
 ありがとうです!心強いです!でもでもでも今は!今は話を聞いて!
 私は転ぶ勢いで傾いていた体制をなんとか立て直し、とりあえず階段の昇りに心と体を備える。
 一般家庭と比べ長い廊下……といってもそんなに驚くほど距離があるわけでない、あっという間に階段の前に走り辿り着く。
よし!大丈夫、緑里さんが私の手を握ってるのは変わらないけど足の速さは私と代わり無い。
階段も二人で並んで上がるだけの幅は十二分にある。これなら並んで――
「えっ」
 一段目の踏み板に足を乗せたところで私の驚いた声が漏れる、何故なら緑里さんの一歩目は私の先、三段目を踏んでいたからだ。
「あ、あぶな!」
 せっかく整えた体制もそれには対応できず私の体は後方へと大きく反れる。
「あら?」
 流石に倒れる私を引っ張ることは出来ず緑里さんも私と同じく階段下へと体が傾く。
ドスンという音が二つ。
「痛てて」
 私は腰を擦りながら上体を起こす。すぐ隣で緑里さんが「トホホ」なんてふざけながら笑っている。
 とりあえずお互いに怪我みたいなことはなくて一安心。
ふと目が合うと緑里さんはエヘヘみたいな感じで無邪気に笑った、私もつられて頬がにやけてしまう。
「遊んでないで、早く済ませなよー」
 ご飯を食べていた居間の方から左近さんの声が聞こえた。
そしてまた二人で顔を合わせ少しキョトンとした後、また笑いが込み上げてきてしまったのでした。
作品名:葉音~すえなり~5 作家名:B.R