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葉音~すえなり~10

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   葉音〜すえなり〜
                                  B.R.
「左近さん。なにかお手伝いできることありませんか?」
 昼前の台所。手の平を胸の前で擦り合わせ、千布は相茶に仕事の催促をされていた。
「あー、私は大丈夫かな?緑里のほうに――」
「緑里さんも千布さんの手伝いをするようにと言っていて……」
 しゅんとして申し訳無さそうにする相茶。
 名は旅館として建っていても広さは大き目の民家と変わりない。
それに肝心のお客が入っていなければ、新人の仕事は掃除ぐらいしかない。
「あー、じゃあお昼を作るのを……」
 手元に視線を下ろすと三つのオムライスが、これまた三つの皿に盛り付けられていた。
「食器を運ぶのを手伝って貰おうかしらね、うん」
「はいです」
 アタシはオムライスの乗った皿を二つ手に取り残り一つを相茶に頼み、居間へ向かう。
 ギシギシと小さく軋む廊下を渡り、居間に料理を運び終わる。
「…………」
 「さぁ!次は!何を!」といった様子でキラキラとした瞳を向けられる。
思わずたじろいでしまう。
「つ、次はね……」
 テーブルに三つ並んだオムライス。
2、3秒の間「むむ……」と悩んでしまう。
「じゃあ相茶ちゃん、台所からスプーンを……」
「千布ちゃん忘れ物よ〜」
 いつもは調理はおろか、料理を運ぶことすら面倒くさがる緑里が先の割れたスプーンを三つ握りながら部屋に入ってくる。
「珍しく気が利くじゃない。珍しく」
「へへ、褒めないでいいのよ。トーゼンの事なんだからねぇ」
 いい加減アタシも悟るべきだと思う。この娘(緑里)に嫌味は通用しない、と。
「えっと、左近さん?」
「じゃあ、いただいちゃいますかね。ちょっと早いけど」
 まだお昼の十二時より三十分も早い。
別に悪いことではないのだが、相茶ちゃんに急かされてる様でお昼が早まってしまった。
「はいはーい、いただいちゃいましょうねぇ」
 ささっと席に座り「まだかまだか」とアタシと相茶が席に着くのを待つ緑里。
 「はいはい」と炬燵に入り手を合わせる。もちろん相茶ちゃんもすぐに席に着く。
「「「いただきまーす」」」
 二人が一口目のオムライスを口に運んだところで、嬉しそうに咀嚼する相茶ちゃんに声をかける。
「相茶ちゃんさ、もしかしなくても暇してるよね?」
 「う」と食べるのを止め、スプーンをテーブルに置く。
「スイマセン……」
「あ、いや、怒ってるわけじゃないのよ。ただ折角働き始めなのにやることなくてヤキモキしてないかなーって」
 うな垂れて下を向く相茶ちゃん。
口では何も言わないが、その反応は「はい、そうです」と言っているのと同じだ。
「アタシが言っていいのか分からないけどさ、あんまり気を詰めちゃ――」
「いえ、そんなことはなくて……。ただ私は料理も掃除も、全然まともにこなせないですし、早く左近さんや緑里さんの役に立てるようにしたくて……」
 恥ずかしそうにしながらも、そうハッキリと答える相茶ちゃん。
熱くなる目頭を脇に向けると、黙々とスプーンを動かす緑里。よく見るとほっぺに畳の跡がある……。
「緑里、相茶ちゃんの言ってることアンタ聞いてる?耳が痛くならないの?」
「ん?あぁ、確かにもう少し焦げ目が欲しかったかもねぇ」
 何故かアタシの方が相茶ちゃんに申し訳なくて泣けてくるよ。
猫はどんなに努力や勉強をしてもライオンになれないなんて話もあるけどさ。
年がら年中寝てる猫や、ネズミの一匹も捕まえられない猫にはなってしまう可能性はあるわけさね。
 アタシは「アハハ」と困ったように笑っている相茶ちゃんの肩に手を置いて一言だけ伝えた。
「とりあえずはライオンを目指していいわよ」
 相茶ちゃんは首をかしげキョトンとしていた。
作品名:葉音~すえなり~10 作家名:B.R