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上着を脱がす理由はそれで

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「手っとり早く温まる方法知ってますかー?」

にこにこにこにこと、花がほころぶような笑顔を浮かべながらアルフォンスが今まさにしていることと言ったらロイの軍服の胸倉をつかみ上げているということで。
あまりの出来事に恐慌したロイはひいいいいっと叫び声を上げそうになったが辛うじてそれだけは耐えた。
アルフォンスがこのような笑顔になるのは心底怒っている時だと知っているからだ。下手なリアクションを取ればその時点で撲殺されかねない。が、ロイにはアルフォンスがこのようにして怒る理由など思いもつかなかった。
きょ、今日は何もしていない。アルフォンスを怒らせるようなことは何も。鋼のも怒らせていないし泣かせてもいない。……まあ夕べ久しぶりに鋼のとちょっとした時間を過ごさせてもらったが、久しぶりの恋人との時間だ、その程度は許されるはずだ。それに今まではアルフォンスは鋼のと私の関係を黙認はしてきてくれたはずだし、昨夜は日付けが変わる前にはきちんとホテルまで送り届けた。問題はないはずだ。なのに何故……っ!!
恐慌状態から立ち直りかけたところで己の状態にハッと気がつけば。
アルフォンスは掴み上げたロイの軍服を思い切りよく脱がしている最中で。
「ちょっ、君、何をしているのかな?」
こんなことをされる理由など一つすら思い浮かばない。おかしいではないか、私が鋼のの上着を脱がすのならともかく、何故アルフォンスが私の服を脱がすのだっ!落ち着け私、ちょっと冷静になって状況を確認してみよう。

現状アルフォンスは笑っている。が、この笑い方は高確率で怒りまくっている時だ。
そして私の上着をアルフォンスは脱がしかけている。理由は何だ?先ほど「てっとり早く温まる」と彼は言っていた。
ということはなんだ……考えたくはないが……考えたくはないが…もしや私が受け、か?

まさかまさかと考えてはみるのだが、それだけは正解だと思いたくはない。かといって本気で抵抗して万が一にでもアルフォンスを殺してでもしたら。今度は私が鋼のに殺される。それはマズイ。愛憎の末の殺人なんてまるで三面記事だ。

ロイが硬直したままでいるうちに。アルフォンスはとっととロイの軍服の上着だけを脱がせてしまった。そうしてトンっと軽くロイを突き飛ばし、組み手の構えを取った。
「格闘訓練に上着は邪魔でしょう?さあ、いきますよー」
ニコッと笑って繰り出してきたのは右足からの強烈なキック。ロイはかろうじてそれをガードした。
「ちょっと待てアルフォンスっ!この手のことは私ではなく鋼のかハボックとでもやりたまえ」
右・左・右とフットワークを利かせ、紙一重でロイはアルフォンスの攻撃を避け続ける。
「でもですね。夕べ夜遅くホテルに戻ってきた直後に兄さんが言ったたんですよ」
右ストレートに続いてミドルキック。間髪を入れず、容赦のない攻撃を繰り返すアルフォンスだ。
「何だっ!鋼のが何かを言ったのかね!?」

「大佐が重かったって。上に乗っかられるとつぶされそーだって。無邪気にですね」

にこおおおおおおおおおおおっと地獄の天使のような笑顔が見えたと思った瞬間にロイの腹にパンチがヒットした。とっさに腹筋を絞めてはみたのだがそれでもよろりと一歩後ろに下がってしまったのは腹に受けたダメージよりもアルフォンスの発言内容に眩暈がしたからかもしれなかったからだ。
お、重い?私がか?潰されるなどというくらいに重かったということはそれは……デブ、ということだろうか。
さああああああっと顔が青ざめた。確かにこのところ書類にサインのみの毎日だった。つまり一日中座って手のみが動いているという……。ま、まずい。私のこの見事な腹筋がすべて脂肪に変わるところなど想像もしたくない……。したくはないのだが、アルフォンスとこのようにやりあうのも大変だ。アルフォンスの顔に擦り傷でも付けたのなら、付けたのなら……脂肪などよりもそちらのほうが恐ろしい。短気な恋人に、ボッコボコにされた揚句おさわり禁止令を出されるのは目に見えている。どっちに転んでもまずいのではないだろうか。
驚愕状態のロイとは反対に、アルフォンスは攻撃は更にその速度を増していった。
「兄さんと大佐が寝台遊戯を繰り広げるのは勝手ですけどね。兄の情事なんてボクは知りたくないんです。ついでに言うと兄さん潰すくらいにメタボになるくらいならさっさととっととダイエットしてください」
一石二鳥を兼ねて格闘訓練ですっ。さっさと身体温めて汗かいて痩せやがれっ!!と
叫ぶアルフォンスからどうやって逃げようかと、ロイは必死の抵抗を繰り返した。


- 終 ‐