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天使か悪魔か

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恐ろしい勢いで、ロイは周囲の女性を食って食って食いまくっていた。今日の恋人が明日には変わるというような日替わりの恋人ですらない。下手をすれば早朝にケバケバシイ外観の某ホテルからご一緒した美しき女性など昼には忘れて夕刻にはさっさと次の相手を見つけるためにコンパへと繰り出す。そういう日々を送り続け……。さすがに呆れた親友のマース・ヒューズが忠告かたがたロイの家にやってきたというわけだった…。

「ロイ。お前いい加減にしろよ。別に恋人を一人に絞れという気はねえケドな、だけどご乱行、にもほどがあるぞ、最近のお前さんは」
咎めるような親友に言葉にも今のロイには届かない。いや、忠告されるまでもなくそんなことはわかっているのだ。そう自分とて好きで女性を食いまくっているわけではなかったのだから。
「男連中はすでにブーイングの嵐だ。お前につまみ食いされた女性陣もな。……ブスっとナイフで刺されて流血騒ぎになっても知らねえぞ?」
まあ、それも近い未来には起こりうるだろう。それほどにロイの乱行は凄まじかった。が、彼にも事情というものが存在した。食って食って食いまくらねばならないというその事情が。
「ヒューズ…」
「ああ?なんか理由があるなら相談くらいしてみろよ。これでも一応お前さんの親友だと思ってんだけどな」
「……………シャレにならん事態なのだよ…」
重い口をロイが開こうとしたその瞬間。ロイの部屋のドアがガチャリと開いた。
「ロイ兄、あのねー」
ドアを開けたのは金色の天使、いや、お隣さんのエドワード・エルリックだった。
「エドワードっ!!」
途端に輝くロイの表情。ヒューズはその変わりように唖然とした。
「あー、おきゃくさんきてんのか?ごめん、ロイ兄。オレこれ、ロイ兄に…」
差し出されたのは赤い折り紙でおられたツルだった。ツルを渡して帰ろうとしたエドワードに「外は寒かっただろう。こっちへおいで」などさっきまでの重い口調はどこへやら。甘ったるい声を出し、いい子いい子と頭を撫でながらエドワードをぎゅっと抱きしめる。
「ああ、よくできているね。これはエドが作ったのかい?」
その折り紙を大事な宝物のように受け取って、じっくり眺めてからロイは満面の笑顔をエドワードに向けた。
「うん!よーちえんでせんせーにおしえてもらったんだぜ!あー、あとな、あと、ロイ兄。オレな、かめさんとかやっこさんとかも作ったのー。だからロイ兄にやる!!」
んしょんしょと、エドワードはズボンのポケットから折り紙で作ったカメとやっこさんを取り出した。ズボンのポケットに押し込まれていたそれらはぐちゃぐちゃになってしまっていたが、それでもロイは相好を崩してそれを受け取った。
「そうか。エドは折り紙も上手だね。ありがとう、うれしいよ」
にぱっと笑顔を浮かべるエドワード。天使も裸足で逃げ出すであろうというほどの可愛らしさだ。そしてロイはといえば。……正直にその表情を形容すれば、まさに鼻の下を伸ばしているとしか言いようがない。もしくは初孫を目の前にした爺さんだ。
ヒューズはエドワードを見て、ロイを見て。そうして……、「あー……」と唸るような低い声を出してしまった。
「あ、ごめんな。おきゃくさん…えと、ろい兄のトモダチか?」
オレはエドワードです、と礼儀正しくぺこりと下げられた金色の頭にヒューズは苦笑した。
「オレはヒューズだよ。よろしくなエドワード」
ガシガシと頭を撫でてやれば、エドワードはにこお……と微笑んだ。
なるほど、とヒューズは思う。
ご乱行の原因はこの天使だったのか……と。

「……どうすればいいと思う、ヒューズ」
エドワードが帰ってしまった直後ロイはぼそっと呟いた。が、ヒューズには策などなにも浮かばなかった。あの小さな豆っ子をロイに食わせるわけにもいかず、かといってこのままロイの乱行を見過ごすわけにもいかずただ「あー……」と唸り声をあげるのみだ。
「とりあえず……ロイ……」
「なんだ、良い案でも浮かんだか?」
期待せずに聞いてみる。だが、ヒューズの発言は何の発展性もないものだった。
「豆っ子が大人になるまでは耐えろ」
「……」
「身ぎれいにしろとは言わん。それも仕方がないとは思うのだが、多少控えるくらいはしろよ?だが…あんな子供に手を出すくらいなら…、いや、だがな…」
「……耐えられんからこそのこの現状なのだが……」
「……ロイ…。相手は幼稚園生だぞ?食っちまう気かお前!!」
「…………わかっているともっ!だからこそ他のお嬢さん方に相手をしてもらっているっ!!」
「相手を絞れよ!!食いまくってどーするっ!!しらねーぞ?豆っこがもうちっと大きくなってお前のヤってる意味わかって『ロイ兄って……不潔なんだな…』と言われるところ想像してみろっ!!」
どががががががーーーーーーんっ!!との擬音がつきそうなほどの衝撃をロイは受けたらしい。端正なその顔は一瞬にして崩れ落ちた。
「ふ……不潔か…・・・そっそうだな、エドワードは純真だからな…私のとっかえひっかえのこの乱行を知れば……」
ぶるぶるとロイの手は震える。全身も戦慄いて。無意味な笑みがふっふっふと零れるが顔はすでに蒼白に変化していた。
「嫌われるかもな」
ロイが恐ろしくて続けられなかった単語をヒューズはあっさり口にした。
「その単語を口にするなあああああああ、この馬鹿ものおおおおおっっっ!!!」
馬鹿はお前だロイ、とヒューズは心底思ったが、そこは親友という名の優しさで胸の内だけに秘めておく。

この親友の乱行の原因。幼稚園生のエドワード・エルリック。大の男をここまで狂わせるとはその正体は天使なのかそれともはたまた小悪魔なのか。
いずれにしろ、ロイの将来は真っ暗だなと、ヒューズはため息ばかりを吐きだした。


‐ 終 ‐


作品名:天使か悪魔か 作家名:ノリヲ