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peso@ついった廃人
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…恋に落ちるまであと、何秒

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【…落ちるまで、あと何秒】



一瞬で落ちた
…本当に一瞬で。

「その喧嘩、乗ってやるって言ってるんだよ」

その雰囲気に飲まれる。
あの眼光に引き込まれる。

「いいな、お前。古風じゃねえか。チーマーって言うよりゃ番長って感じだぜ」
「ここじゃ目立つ。場所を変えようや」
門田の言葉に千景は笑顔のまま首を振る。
「その必要はねえよ」
「あぁ?」
「一瞬で終わる」
地を蹴る。宙を蹴る。
「お前の一瞬ってのは、何時間あるんだ?」
門田はそう呟きながら、周囲のざわめきを耳にし、千景に再提案する。

たまらねぇ、 たまらねー…その目その顔。千景は口元を緩ませ歓喜に身を震わせた。
周りのモノなど一切見えなくなっていた。

かどたきょうへい

頭にしっかりと名前をインプットする。
この感覚久しぶりだった。
“へいわじましずお”をいい、“かどたきょうへい”といい…世の中には面白い奴がいるものだ。

「そっちこそ、ハンデにこの武器を貸してやろうか?オッサン」
「まだ俺は25前だぞ、ガキ」
ゾクゾクした。本当におもしれー…おもしれー…おもしれー!!!!
合図することなく、互いの拳がぶつかり絡み合う。
右頬が引きつる。笑っている自分がいて、おかしくてしかたなかった。
互いが顔を見合わせ笑い合う。鈍い音が拳を伝って振動する。
アンタも一緒の気持ちなのか?同じだったら面白い。
さっきまで名前しか知らなかったヤローでも拳で分かり合うってのも悪かねぇ…それにアンタのその目、その表情。
「悪党だな、あんた」
「ダラーズは悪党の集まりだからな。当然だろ?」
ボロボロになりながら笑い合う。気持ちいい。おもしろい。
もっと、もっと知りたいと思った。
ダラーズではなく、To羅丸としてでもなく
もっと、もっと……そうすればもっと面白い事になるんじゃねぇか
そう思うと笑みがこぼれた。
きっかけなんてどうでもいい

一瞬で終わった。
落ちる。

千景は確信する。
それでもいいと思った。
一目惚れなんて信じてねぇ…信じてねぇんだけどなぁ。

その不明確な感情に笑い千景は扉をノックする。

「門田ぁぁ、開けろー俺だー俺、俺」
ドンドンドン、ド、ドドン
「かーどーたーかーどーたーーぁぁ…あ?」
「…うるせぇ!!!」
勢いよく開いた扉の向こうには不機嫌そうなボサボサ頭の男が一人。
「よ!」
「…なんでウチの住所知ってんだ、あ?」
「池袋の優しいレディが案内してくれたのさ」
門田の脳裏に浮かぶは問いただしても素直には答えないであろうニヤニヤと笑みを浮かべる女が一人。
(アイツ…あとでしめる)
その間も千景は包帯の取れた顔でニコニコ笑顔を向け玄関に立っている。
足はしっかりドアの間に入れたまま。
「で、何の用なんだ?まさか、この間の決着…」
「いやいや、そんな事しねーって…当分無理、彼女達がまた俺の顔見て泣いちゃうからさ」
そう、へらへらと笑いながら傷のあった頬を擦りながら千景は玄関のドアをこじ開けひょいひょいを中へ入ってきた。
「ちょ、おま…」
「へー、門田意外に綺麗にしてんのねー、意外意外」
ぽんぽんっと玄関に投げならた靴を慌てて綺麗に揃え門田は部屋へズカズカ侵入する来訪者の肩を慌てて掴んだ。
「ぃっっ」
「あ、すまん」
掴んだ瞬間、歪んだ千景の顔に門田は驚いて手を離す。
「うっそーん」
へらへらと笑う千景に門田は絶句する。
「おま…」
そんな門田のコロコロ変わる表情に千景はニーって歯を出して嬉しそうに笑うと急に門田の両肩をガシッと掴み、
「京平」
と、ぐいっと門田の顎を引き寄せ顔が近づいてきた。その豹変した真剣な表情に驚き目を大きく開けたまま硬直する門田。
(キスされる??!!)
そう思った瞬間ぎゅっと目を閉じて身を堅くするが千景は触れるか触れないかの距離で口を耳元に寄せ囁いた。
「キス…するかと思った?」
「は?!」
耳まで真っ赤にして固まった門田を横目に楽しそうに笑う千景に門田は目を大きく開け口をぱくぱく泳がせる。
「これ、俺の電話ばんご。よろしく!」
そういうと硬直した門田の手に綺麗に4つ折りにした可愛いメモをねじ込むと帽子をひらひら振って踵を返す。

いまいち状況の飲み込めない門田はその後ろ姿をただ茫然を見送り、手に持った可愛らしいメモを睨みつけ、耳元で感じた息がまだ生々しく残っていて右耳をポリポリと掻いた。
「なんなんだ…アイツ」
何処か機嫌の良い突然の訪問者に門田はただため息を漏らし、苦笑いを浮かべながらメモをポケットにしまい、玄関を閉めた。


その頃、門田宅を離れた千景は慣れない池袋の土地をフラフラ一人歩きながら晴れ渡った空を見上げていた。

「ふん〜ふ〜ん♪」
その手には小さな鍵が一つ。
(ったく不用心だよねー…玄関に鍵置きっぱなしにしちゃーさ)
楽しそうに大事そうに握った鍵をポケットにしまい鼻歌を口ずさみながら池袋の町に消えていく。



携帯の着信があるまで、あと………


それが恋と気づくまで、あと…………





                             ・・・終れ。