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はろ☆どき
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九十九と一の幽玄ー後編ー【HARUコミ20新刊】

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ー後編冒頭よりー


「わぁ、花火みたい。綺麗だねえ」
 ロイが放った焔で辺りが明るいうちにと必死でエドワード達が足元に目を凝らしている中、トーマスは楽しげに落ちて散っていく火花を追っていた。
 暫くすると焔が消え、再び薄闇が訪れる。足元もはっきりとは見通せなくなった。
「あんた、見えた?」
 エドワードはロイに尋ねる。悔しいが自分よりも背の高いロイの方が見渡せた範囲が広いだろう。
「ああ。階段に描かれたものと同じ様な円や記号が見えたように思う。詳細には確認できなかったがね」
 空間の広さからしても、真上から見なければ全体を細かく確認するのは無理だろう。そう考え、今度はトーマスに尋ねた。
「お前さ、上の方からこの模様見たことあるんだよな。階段にあったのと同じかどうか分かるか? それともどっか違う部分とか」
「うーん」
 トーマスはエドワードの持っている手帳の錬成陣を見ながら腕組みをし、首を傾げて考え込むような仕草をした。
「僕、階段の模様はあんまりはっきり見てないからなぁ。まったく一緒かどうかまでは分かんない。同じように丸とか三角とか四角があって、よく石とかチョークとかでなぞってたんだけど……あ」
 トーマスは何か思い出したような声をあげる。
「どした?」
 エドワードが促して尋ねると、トーマスはこてんと首を反対に傾げながらぽつりと呟く。
「三角が星になってる、かな」
「三角が星?」
 トーマスの言い方が抽象的すぎて、エドワードには意味が掴めなかった。
「えっとね、階段の模様はね、輪っかの中に大きな三角があったでしょ?」
 そう言われて、エドワードは自分の手元の錬成陣を見た。簡素化して描き取ってはいるが、一応構築式ではあるので実際はもう少し複雑だ。だが、トーマスや子供達は構築式を知らないだろうから、単なる丸や三角に見えていたのだろう。
 エドワードは手帳を少し遠ざけて、もう一度見直してみる。構築式としてではなく形として捉えるように。
「ほら、上が尖った三角が輪の中いっぱいにあるでしょう」
 そう言って、トーマスはエドワードが持っている手帳の錬成陣をなぞるように指差した。それを辿ってみると確かに丸の中に正三角形が描かれているように見える。
「これか」
 エドワードも自分の指で三角形をなぞって見せる。
「そうそう」
 トーマスは嬉しそうに頷いた。
「この三角がね、村の方を指してて矢印みたいって、お姉ちゃんと話してたの。おうちに帰る目印みたいだねって」
 確かに錬成陣は村の方角を向いて描き取ったから、三角形の頂点は村の方向を向いているはずだ。
「ここのはそれが違うのか?」
 エドワードが再びトーマスに尋ねる。
「うん。三角が反対向きにもあって、合わさって星みたいに見えるの」
「六芒星のような形だろうかね」
 二人の話を聞きながら、エドワードの手帳を覗き込んでいたロイが呟く。
「ああ、そっか」
 六芒星なら三角を真逆の向きに重ねたもので、正に星のように見える。エドワードはポケットからペンを取り出すと、手帳の錬成陣の隣の頁に輪を描き、円周を繋ぐように三角を描いて見せる。
「階段のはこう?」
「そう」
 トーマスがこくりと首を縦に振る。エドワードは続いて逆向きの三角形、下を頂点とした正三角形を描き足す。
「ここのはこんな感じか?」
「そうそう!」
 トーマスが手を打って頷いたところで、彼はまた薄れて消えてしまった。