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Bon Anniversaire!(仏英/APH腐向け)

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Bon Anniversaire!(仏誕/仏英)

押しつけるように差し出された箱に、フランスは淡い金色の濃い睫毛を瞬かせると、はてと首を傾げた。
乱暴に開け放たれたドアの蝶番がイギリスの向こう側でぎしぎしと軋んだ音を立てている。朝一番に古いドアベルを鳴らして飛び込んできたのは、世界で一番凶悪で可愛い(とフランスは思っている。ちなみに、この凶悪は可愛いに掛かるだけでなく、単品でも意味を持つ)イギリスで、二重の意味でフランスは朝から心臓が飛び出るほど驚いた。
変なところ几帳面で律義なイギリスからは、本日の訪問のアポイントメントは貰っていない。
それに、なによりも突然胸元に押しつけられたプレゼント(と思しき綺麗にラッピングの施された正方形の箱)に理解が追い付かなくて、フランスはイギリスを見下ろしたままさらに首を傾げた。回答を求めようとイギリスに視線で問いかけても、イギリスは黙ったまま視線を泳がせてフランスの方を見ようとはしない。
室内に流れる微妙な沈黙。
ちくたくと進む時計の針の音と、ぎしぎし軋む古いドアのちょうつがいの音が嫌に大きく室内に響く。けれど、決して気まずい雰囲気ではない。
イギリスの纏う空気は"気まずさ"とか"羞恥"とかそういった語句がぴったりと当てはまる気がする。証拠に小麦に似た金色の短い髪の隙間から覗いた耳が真っ赤に染まっていて、フランスはその可愛さと可笑しさに耐え切れずに小さく噴き出した。
吹きだした瞬間、イギリスにぎっと睨みつけられるが、伏せた睫毛の奥の緑色の羞恥で潤んでいて、睨みつけられたって余計に可愛らしいだけだ。
フランスは喉の奥でくつくつ笑いながらイギリスの髪をくしゃりと撫でると、胸元に押しつけられた箱をイギリスの手から取り上げる。フランスの指先がイギリスの指に触れた瞬間、びくりと肩が揺れたのは見ない振りをしてやって。
すでに、イギリスの突然の訪問の理由の答えは得ている。
主にカレンダーの日付とイギリスの耳朶と押しつけられた箱から。
押しつけられた箱は、品の良いオフホワイトの包装紙で包まれて、赤と白と青のトリコロールのリボンで綺麗にラッピングが施されていた。ちょこんとリボンの合間に載せられた白の薔薇は摸造花などではなく、瑞々しい生花だ。リボンに埋もれた白いバラの花弁に触れれれば花弁は瑞々しく、初夏の最中にあってもまだひんやりと冷たかった。
きっと朝一番でイギリスの庭で積まれた薔薇だろう。
イギリスの意図なんかお見通しだったけれど(だって、今日この日に朝一番にドーヴァー海峡を越えて、わざわざ綺麗に梱包された包みを持ってくるのだ。意図なんてたったひとつしかあるまい!)、それでも敢えてイギリスからの言葉が欲しくて、フランスは少しだけ屈んで真っ赤に染まったイギリスの耳元に唇を寄せた。
イギリス、と囁くように名前を読べば、イギリスは一瞬だけ視線を彷徨わせて、それから仕方なくといった風に口を開く。
"Happy Barthday My dear."
囁くように告げて、イギリスはこわごわとフランスの背に腕を回す。
イギリスからは朝露に濡れる薔薇の香りがした。耳朶を染める赤みと一瞬泣きそうに揺らいだ緑の瞳が愛しくて、朝一番で届けられた誕生日プレゼントなんかより、イギリスの祝いの言葉の方が嬉しくて、フランスは"Merci"と短く礼を述べ、その細い身体を思いきり抱きしめた。

"Happy Barthday My Dear!!"