Rainbow Girl? Or Tragic Girl?
この気持ちはなんだろう。
別にあいつのことなんて、なんとも思っていないはずなのに。
なんとも、思っていないはずなのに・・・・。
“Rainbow Girl? Or Tragic Girl?”
心の中に黒い霧がかかったように、私の心の中はもやもやとしていた。
「・・・本田・・・。」
「すいませんナターリヤさん今ちょっといいところなので後で・・・」
「・・・呼んでみただけだ。」
「・・・そ、そうですか・・・。」
本田は一度もこちらを向かなかった。
ずっとパソコンのほうを見ている。
はあと溜息をついても、背中を見つめても、本田は私のほうを見なかった。
本田は最近買ってきた「ぼーかろいど」?とかいうやつに夢中なのだ。
さっきから「ミクたん萌え―――――(゜∀゜)――――――!!!」とか言ってる。
別に本田が私のほうを見なくても関係ないし。
本田が私以外の女を好きでも、私に構ってくれなくても。
そんなの、どうでもいいし。
でも、こんなにもやもやするのはなんでだろう。
こんなに近くにいるのに、すごく遠く感じるのはなんでだろう。
知らないうちに涙があふれていた。
どうしてこんなことで涙がでるのだろう。
本田に気付かれないように声を押し殺した。
こっちを向かないあいつにむかついて。
あの背中に腹が立って。
気が付いたら本田の背中に抱きついていた。
「・・・!?な、ナターリヤさん!?どうしたんですか?」
「うるさいおまえなんかきらいだ!!私のほうがお前としゃべれるし私のほうが手つないだりキスしたりできるんだ!!ほんだのばか!!!」
「・・・・?・・・もしかして・・・・ミクに嫉妬してるんですか?」
「うるさい!あんなネギ女より私のほうが・・・・!」
本田は、混乱して変なことをしゃべる私の頭をなでた。
こういうとこもむかつく。
(あーナターリヤさんテラモエスはあはあ)
「ごめんなさい。ナターリヤさんはさびしがりやさんですからね。」
「ちっちがっ!」
違うと言おうとしたが実際私は泣いているので全く説得力がない。
「ナターリヤさんのほうがかわいいですよ。ほんとです。」
「2次元に行きたいとか言ってるくせに・・・。」
「言ってますけど・・・ナターリヤさんのほうが、手を繋いだり、キスしたり、できますからね。」
そう言う本田は私の手を握ってキスをした。
むかつく。むかつく。
まるで私がそうしてほしいと言ったみたいじゃないか。
本田は私を見てにこにこと笑った。
「もちろん、それ以上もできますよね?」
「調子に乗るなばか!」
私は本田の頭を叩いた。
昼間から何を考えているんだこの男は。
「今日はこれを作ってたんです。」
パソコン画面を見せる本田。
液晶には「にほろいど」と書かれていた。
「にほろいど・・・?」
「ええ。紀元前で発売してるんですけど。既存のボーカロイドをお手本に、私が改良を加えたりして、現在鋭意製作中なんです。にほろいど一人だとかわいそうなのでべらろいども作る予定ですよ。」
「そんなの、作らなくていいだろ!」
「だってナターリヤさんはさびしがりやさんですからね。」
「う゛・・・」
「私がべらろいど、ナターリヤさんがにほろいどを持ってれば、離れていてもさみしくないでしょう?」
「・・・そうかもな・・・。」
「さみしい思いをさせてすみませんでした。大好きですよ。ナターリヤさん。」
本田は私を抱きしめた。
2次元ではできないこと。
私としか、できないこと。
「・・・ミクより?」
「ミクより。」
「・・・じゃあ、ゲームも漫画もアニメもやめられるか?」
「それは無理です!!」
即答。
私は本田のおでこに頭突きした。
こいつはほんとに・・・!
「いたぁ・・・!でも、ナターリヤさんが一番なのは変わりませんから。」
「・・・その言葉に免じて今日のところは許しておいてやる。」
本田は私だけ見てればいいんだ。
そう思うのは、私の我儘なのだろうか。
繋いでる手を見て、心のもやが消えていくのがわかった。
作品名:Rainbow Girl? Or Tragic Girl? 作家名:ずーか