二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
さのすけのん
さのすけのん
novelistID. 55457
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

Call your name

INDEX|1ページ/1ページ|

 
真っ白いベッドに横たわる小さな体
脇にある心電図と呼吸の音のみが彼が生きているということを証明していた

遡ること十三日前… 珀と鋭利の二人は任務に出ていた
いつものように、珀は変装し潜入鋭利は外からライフル でターゲットを狙う作戦は成功

任務完了をお互い確認した上で合流する手はずだった…

しかしいつまで待っても一向に鋭利の来る気配はない
不安に思って射撃ポイントであるはずの 川沿いにある建物の屋上へ向かったところ、そこにあったのは鋭利の使っているライフルと、そこから手すりまで続く血痕だった

鋭利の身に何かが起きたことを悟った珀は必死に周辺を捜索し、奇跡的に数キロ下流の岸辺で息のない鋭利を発見して急 いでチャーチへ連れて帰ったのだった

「それにしても…」
つくづく自分のメサイアの悪運の強さには驚かされる

弾丸は幸い、心臓をすれすれで逸れてい たとはいえ、出血したままの状態でかなりの時間を漂流していたはずなのにこうして生きているとは…

「鋭利、あの日一体何があったんだ…」
あの後何度か現場へ足を運んだが、まだ何一つ手がかりはない

「すまない、何もできなかった…」

未だ目覚めない鋭利を見つめて、珀は自分の無力さに俯いて唇をかんだ

「ん…っ」 ふいに、珀の耳に声が聞こえ てきた
はっとして顔を上げると

「え…いり?鋭利!目が覚めたのか?」
うっすらと鋭利が目を開いていた
「鋭利!良かった、このままだったらどうしようかと…」
突然のことにまだ半信半疑の珀がそう声をかけたとき

「…誰?」

一瞬鋭利の発した言葉の意味が理解でずに珀は戸惑う
すこしおいてようやく理解すると、とたんに心の中に何かひやりとした感覚が広がるのを感じた。

「鋭利…俺が分からないのか?」 必死の思いでもう一度問いかけるが
「あの、本当にだれ?ていうかここは…?何で俺こんなところに…」

本当に分からないというふうな顔をして邪気のない瞳で見つめ返すだけだ

冗談ではないことは珀にもよくわかる。 そもそも彼は冗談を言う人間ではない。

「俺・・・帰らなきゃ。父さんと母さんが心配 してる」
そういって立ち上がろうとする鋭利
「待て鋭利、まだ・・・」と珀が止めようとしたが

「うっ…」

上半身を起こしただけで苦しそうにうずくまってしまった

「無茶をするな、その体では当分は元のようには動けない」

しかし、"大丈夫か" そう背中をさすろうとすると今度は強い力で手をはねのけられてしまった

驚いて顔を上げると、そこにはさっきの困惑とは打って変わって血走った目で珀をにらみつける鋭利がいた

「鋭…利…?」

おそるおそる声をかけてみると、低いトーンで「俺はスレギだ。鋭利じゃない!」と吐き捨てた
一体何が起きているのか、とにかく興奮状態では傷にさわるので、おとなしく寝かせようと珀は手を伸ばす

しかしそれか失敗だった

見るからに警戒心剥き出しの鋭利は、 触るなっ!! と怒鳴ると伸ばされた手を振り払い珀の襟元を掴んで

「おまえは誰だ、何でその名前で呼ぶ」 と凄む

荒々しくも冷静な声で、仰向けに床に倒れ込んでしまった珀の上に馬乗りになると首を掴んでいる両手に体重をかけてき た

手を振り払って逃れることも可能だが相手はあくまで鋭利である
怪我人とはいえ穏便に対応できるほど甘くはない

考えているうちにも手の力はますます強まる

必死で考えを巡らしていると

「おや、お目覚めですか海棠君。随分と寝起きの悪いことですねぇ」
片足を引きずりながら、一人の医師(当 然訓練を受けたサクラの一人だ)を従えて一嶋係長が病室に入ってきた


突然の来客に不意をつかれた鋭利はとっさに一嶋との距離をとるために珀から離れた

「いっ、一嶋係長…」解放されて、珀が咳こみながら喉をさする

「まったく情けない姿ですね。…それにしても」 鋭利を一別すると、後ろで控えていた医 師に目で合図を送った
するとすかさず医師は鋭利のいるベッドへ行き「寄るなっ!」と抵抗する鋭利にあっさり注射を施し、鋭利はそのまま気を失ってベッドに倒れた。

「鋭利っ!」
「落ち着きなさい、ただの鎮静剤です。 まったくあなたは何を床で寝ているんですか。たしかにこの状況で動揺するなとは言いませんがそれにしても情けない」

「…」

確かに動揺していたとはいえ一方的すぎ たのは反省すべき点ではあるが、今はもっと重要なことがある
「鋭利は…鋭利に一体何が起きてい る…?」 「ま、みたところ単なる記憶喪失ではなさそうですね。これはあくまで私の推測ですが…

先日の件で海棠君は脳に大きなショックを受けています。先ほどの行動を見るに、目覚めた時は"まだ幸せな生活だっ た頃の海棠鋭利"そして、どうしてかは分かりませんが、"家族虐殺後コリアン マフィアに拾われたあとのスレ ギ"だと思い込んでいたのだと思 われます

予想よりショックが大きかったようです ね。おそらく頭のなかで様々な混乱が生 じてこのような現象が起こったのかと」

まるで明日の天気を予想するかのような冷静な声で淡々と話した。

それにしても一体この男はどこから知っているのだろうか

「・・・にわかには信じがたいが、確かにそうすると納得がいく部分もある。 しかしそれでは元に戻る可能性 は・・・?」

「さぁ、今のところはなんとも言えませ んね。生きているだけでも奇跡ですから。まぁ最悪記憶が戻らなかったとしてもまた一からサクラとして教育していくだけの話です。当然メサイアの変更も仕方のないこと、あなたには辛いでしょうが。」

同情など微塵も感じられない一 嶋の話を、珀は呆然と聞いていた。

もし本当に鋭利がこのままなら、せっかく心を開ける世界で唯一の人間を失ってしまうことになる。想像するだけで胃 が捩れる思いがした。

「なんとかならないのか・・・」すがる思いで一嶋に問いかけでも

「私には何もできませんね、殘念ですが。
私がこう言うのもなんですが、
彼の記憶が戻るかどうかは…あなた達メサイア同士の絆次第…かもしれません」

最後にそう言うと、一嶋は鋭利と珀を残して出て行った









”彼の記憶が戻るかどうかは…あなた達メサイア同士の絆次第…かもしれません”

一嶋の言葉が珀の頭にこだまする

絆・・・か・・・

ベッドの横に腰掛けて、今は静かに寝息をたてる己の半身を見つめた

「鋭利・・・」 名前を呼びながら柔らかな髪を撫でるとくすぐったそうに眉にしわを寄せる鋭利
「鋭利・・・」部屋の掃除をしろと何度怒られたことか
「鋭利っ・・・」おまえの代わりなんて居ない おまえ以外は考えられない

「なぁ、鋭利」俺たちの絆はどのくらい強くなれただろうか

「一緒に桃太郎生還の理由、確かめるって言ってたよな」

俺のメサイア 俺の希望 俺の世界でたった一つの救い

鋭利・・・鋭利・・・鋭利・・・

何度だって呼び続けよう
日が暮れても 夜が明けても たとえ何年経ったとしても

  おまえが思い出すまで何度でも・・・








おわり
作品名:Call your name 作家名:さのすけのん