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失敗しても

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「なんか焦げ臭い…」

大学の帰り、
つぼみの家に寄った大輝は
異臭に思わず鼻をつまんだ。

「カレーならできるかと
思ったんだけど…」

「焦がしたみたい。」

焦げたところに
お玉で混ぜたせいで、
ところどころに黒い物体が
混ざったカレーが
そこにあった。

「焦げをとれりゃ食えるだろ。」

「えっ食べるの?これ。」

「もったいねーじゃん。」

そう言いながら大輝は
ご飯をカレー皿についで
カレーをかけた。

食べてくれるんだ…

「オレも最初作ったカレー、
こんなんだったしな。
みんなそんなもんだろ。」

そう言いながら、
いただきます。と
手を合わせて大輝は
焦げたカレーを食べ始める。

「なんで?」

「は?」

「なんでそんな優しんだよ。」

すずめはうつむいて
ふてくされている。

「なんだよ。優しいのの何が不満だよ。」

「不満がないのが不満だよ!」

「は?何言ってんの?オマエ。」

大輝はすずめがどうしてほしいのか
よくわからない。

「食べねえのかよ?」

「食べる…」

すずめも座って
自分の作った
焦げたカレーを
食べ始める。

「う…まずい…」

「そうか?」

「やっぱ食べちゃダメ!」

すずめは大輝が食べかけていた
カレー皿を取り上げた。

「あっ」

「なにすんだよ。」


「だって大輝、お腹壊すよ…」


「これくらいで壊さねえし。」


「ダメだよ。」


「何かあったのか?
オマエおかしいぞ?」

「自分がダメな人すぎて…
大輝ができた人すぎて嫌だ。」

「なんだそれ。」

せっかく誰にも気兼ねなく
会えるようになって
嬉しいはずなのに、

二人の間に不穏な空気が
流れた。

「オレがそれでいいって
言ってんのにダメなのか?」

「大輝は関係なくて
自分の問題だから…」

「二人で過ごすのに
なんでオレは関係ないとか
言えるんだよ。」

大輝がムッとして言った。

「えっ…そんなつもりじゃ…」

すずめは泣きそうな顔になる。

「そんな顔すんな。
そんな顔させるために
二人でいたいわけじゃないし。
どうやったらオマエ笑うの?」

「え…」

「早くできるようになろうと
力入れすぎなんじゃねーの?
頑張らなくていいから。
失敗も楽しめ。ホラ。」

大輝はすずめの頬をつねる。

「はひたたたた。」

「ほら、やっぱりできすぎ
じゃん〜〜〜」

とすずめがポロポロ泣き出す。

「は?何がだよ。
わけわかんねーよ。
怒ってこんなの食えるかって
責めたほうがいいっての?」

「そんなのも嫌だ〜〜」

すずめは余計に泣いた。

「わがままか。」

大輝はすずめの涙を
ティッシュで拭きながら
呆れ顔だ。

「じゃあ、どうしてほしい?」

大輝はたずねるが、
すずめは自分でも
どうしたらこの気持ちが
収まるのかわからず、
戸惑っていた。

「………」

「………」

長い沈黙のあと、
大輝は「わかった。」と言って
すずめをぎゅっと抱き締めた。

そして

「よしよし」

と、すずめの頭を撫でて

「よく頑張りました。」

と言った。


「!!!!」

すずめはビックリしたけれど、
自分のイライラした気持ちが
ストンと落ち着いたのに
気がついた。

「大輝。私、誉められて
のびるタイプかも…」

すずめは大輝に
頭を撫でてもらいながら、
大輝の胸に顔を埋めた。

「ご飯作ったら、
いつもこれして?」

と甘えるすずめに

「はいはい。」

と言いながらも、

まんざらではない
大輝だった。
作品名:失敗しても 作家名:りんりん