二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

思わずの・・・

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「小籠包が食べたいな・・・」

きっかけはアイツがボソッと
つぶやいた一言だった。

テレビで見て
美味しそうだったからとかで、
アイツの頭の中は
最近ずっと小籠包だ。

それがオレは面白くない。

なんでかいつも
食べ物に負けてる気がする。

「中華街でも行ってみるか?」

負けてるとわかっていながら
やっぱり喜ぶ顔が見たいので
そんなことを言ってみる。

「中華街?!横浜の?」

あーあ、もうヨダレ
でそうじゃねぇか。


「初めて!嬉しい!」

頬を上気させて
本当に嬉しそうに笑う。

ま、いっか。

放課後電車に乗り、
横浜までやってきた。


「ほわわわわ!
すごい!中国に来たみたい!」

「あっ馬村!すごいいい匂いする!
あっち行ってみよう?」

アイツにグイグイ引っ張られ、
オレはまた赤面する。

「あっごめん。」

この癖どうにかなんねーかな!
マジで。

なんで好きな女に
こんな気を遣わせねぇと
いけねんだよ。

「いいって!
もう気にしてねえから。」

っていうのはウソだ。

ホントは普通に歩きたい。

触れられても赤くならないように
なりたいんだ。

「じゃあ、ずっと手を
つないでおこう。」

「え?!」

アイツが手を繋いできて
それで二人で中華街を歩く。

顔がカッカして
手が汗ばんできた。

ヤベエ・・・

「馬村、こっちまで
緊張するんですけど。」

「しょうがねえだろ。」

「ずっと繋いでたら
そのうち慣れる?」

「さぁ、わかんねぇけど。
そうなんじゃねえの?」

「じゃあ、ずっと
繋いでようか。」

「えっ?!」

「そうだよ!
それが普通になれば
いいんじゃん。」


そう言って、アイツは
やれ肉まんだ、餃子だ、
ピータン売ってる、
初めて見た、と
はしゃぎながらも、

ずっとオレの手を
握ったままだった。

片時も離さず。

オレも離したくなかった。

でもドキドキした。

「あった!これこれ!
テレビで見た小籠包!」

「ほわー!こんなのなんだ!」

目的の前に
すでにかなり買い食いして
オエップとなりそうなオレ。

コイツ、胃袋マジで
穴空いてるんじゃねえのかな?

「おじさんに買って帰ろ。」

「え?食わねーの?
これが食いたかったんだろ?」

「馬村と一緒にいたら
楽しくてもう胸いっぱい。」

そうサラッと言って

「おじさん、これ4個ください。」

と小籠包を買う。


「オレも親父と大地に
買って帰る。」

珍しくオレは家族に
土産を買った。

お金を払うと
また手を繋ぐ。


「いい匂いだねー。」

歩きながら駅に向かっていると

グゥゥゥ

という音が鳴った。

「えっオマエの音?」

信じらんねぇ。
あんなに食ったのに。

「アレ?胸いっぱいな
はずなのにな。」

おかしいな、と言いながら
照れ照れと頭をかく。

「プッしょうがねえな。ほら。」

と、さっき自分で買った
小籠包の包みから
一個出して渡す。

「え、でもこれは馬村が
おじさん達に買ったんじゃん。
自分のお土産食べるからいいよ。」

アイツがそう遠慮する。

「どうせ途中でまた
腹へったって言うと思って
オマエの分も買っといたんだよ。
いいから食えよ。」


「ありがとう…」

頬をピンクに染めて
そう素直に礼を言う。

公園らしき広場に座って
小籠包を食べた。

オレも1つ。

来る前は小籠包に
少々憎らしさを
覚えていたのに
今は感謝すら感じている。

「うめぇな。」

「美味しいね!」

「馬村と来れて楽しかったよ。
ありがとうね。」

コイツはいつも割と素直に
嬉しいとか言うなぁ。

かわいい。

と思ったら
頬にキスをしていた。

「あ…」

頬に手を置いて
アイツが真っ赤になっていた。

「今のはアレだ、
小籠包がついてたから」

思わず言い訳をする。

別に付き合ってんだから
言い訳も要らないはずだけど。

「手を繋ぐのは赤くなるのに
なんでキスは赤くならないの?」

え?そうなのか?

「自分からするときは
赤くならないのかな?」

「いや知らねえし。」

「じゃあ手を繋いでみてよ。」

「えっ」

「ほらほらさぁさぁ。」

なんなんだ、一体。


言われるがままに繋いでみたら
やっぱり顔がカッカしてきた。

「なんでえ?」

こっちが知りてぇわ!

コイツただ面白がってんじゃねえの?


「帰るぞ。」

そう言って今度は手を繋がず歩き出す。

横浜から最寄駅までいって
電車から降り、
家まで送ろうとしたとき、

一日手を繋いでたせいか、
ふと手が寂しくなって、
自然にアイツの手をとって
歩いていたらしい。


「馬村?」

「なんだよ。」

「今手繋いでるのに
赤くなってないよ?」

「え…」

自分がアイツの手を
握っていることに
言われて気づいた。

「思わずやっちゃうと
赤くならないんだね!
じゃあ、いつも思わず
しちゃえばいいじゃん!」

「バッバカか!
そんなことできるわけ
ねーだろ?」

何言い出すんだ、コイツは。

自分の言ったことに
気づいてんのかな?

気づいてねーんだろな…

「ハァ…」

深くため息が出た。

「?どうかした?」

オレの顔をのぞき込むように
下から見上げてくる。

くそっ。


チュッ


オレはアイツの口に
浅く口付けた。


「!」

「思わずしてやった。」

「ウソだ!だって顔真っ赤じゃん。」

「うるせえ。思わずったら
思わずなんだよ。
オマエがしろって言ったんだろ?」

「キスしろとは言ってない!」

「なんだよ。嫌かよ。」

「…嫌じゃない…ですけど…」

あーーーーもう!


オレはギュッとアイツを抱きしめた。

「あ、思わずだ。」


クスクスとアイツが笑う。

「イチイチ確認すんじゃねえよ。」

抱きしめたままオレは言う。


「うん。どっちでも嬉しいや。
馬村だったらなんでもいい。」

ハァァァ…

「だからオマエそういうこと
言うんじゃねえよ。」

離したくなくなるだろうが。


「……次どこ行く?」


「えっ次?次はねー…」

こういう時間がオマケで
ついてくるので、

食べ物デートも悪くないと
結局食べ物で釣るオレなんだ。
作品名:思わずの・・・ 作家名:りんりん