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羨望

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未だかつて誰にも語っていないことだが、キョウヤは竜牙を羨んだことがある。極悪非道、冷徹無比、最凶最悪のブレーダーと謳われる、あの竜牙をだ。本当はキョウヤ自身も認めたくなどなかったが、上下左右あらゆる角度からその感情を眺めると、やはりそれはどう見ても紛れも無く、“羨望”なのだった。こんなことを口にしようものなら、キョウヤの周りの誰もが目を剥いて驚愕し、正気を疑うような眼差しで見てくるに違いない。だからキョウヤは誰にもその感情を悟られないように努めた。と言っても、キョウヤを信じすぎるほど信じる仲間たちの前では、ただ口を閉ざしているだけで良かったが。

キョウヤは竜牙が羨ましい。バトルの強さなら己のレオーネが一番だと自負しているし、それに見合うだけの実績もある。一度入って自分から去ったのだから、暗黒星雲(ダーク・ネビュラ)にも価値があるとは思わない。キョウヤが羨むのは、銀河との因縁だった。銀河はいつでも、竜牙を見据えている。キョウヤと出会う前からずっと、そうだった。銀河が修行の旅に出たこと、キョウヤの住む街に来たこと、バトルブレーダーズを目指したこと……すべての根底には竜牙の存在があった。銀河が目指すのは竜牙だ。他のブレーダーとのバトルをいくら楽しんだとしても、それは通過点に過ぎない。バトルが終われば、銀河の視線は、心は、すぐに竜牙を追いかける。たとえ竜牙を上回る強さのブレーダーが現れたとしても、銀河は竜牙だけを見るだろう。

現時点で、銀河の心をここまで圧倒的に支配しているのは、竜牙ただひとりであると言っても過言ではなかった。竜牙に対して向けられる、銀河の強い感情。それがたとえ怒りや憎しみであっても、キョウヤは羨ましかった。キョウヤは銀河だけを見ている。しかし、銀河はキョウヤを見ない。キョウヤだけを見ない。その事実が時折、心の中に影のように忍び込み、キョウヤを苛立たせた。そんなときキョウヤはただ、レオーネを回す。竜牙を倒すことだけを考える。竜牙を倒せば、奴を上回りさえすれば、その位置を奪えるのだと、信じようとする。竜牙と銀河の間にあるのは、単なる“かつての勝者と敗者”の関係だけではないということには気づかないフリをして。

銀河が竜牙を追いかけるように、キョウヤも銀河を追っている。銀河にとっての竜牙が、キョウヤにとっての銀河なのだ。銀河が竜牙を意識すればするほど、それと同じだけ、キョウヤも銀河を見つめる。何をしていても忘れることは無い。何があっても諦められない。キョウヤが銀河に対してそうであるように、銀河も、キョウヤに対して同じだけの(それこそ竜牙に対するものと同じ)感情を向けてくれたなら……。どんなに特訓に集中しようとも、こびりついて離れない思考。その果てに思うのだ、決して口には出せない、誰にも語れない言葉―――「奴が、羨ましい」。
作品名:羨望 作家名:ひょっこ