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寂しさを追いかけて

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置手紙を残してひとり消えた銀河を探すため、集まったメンバーの中に盾神キョウヤがいたことは、ケンタを少なからず驚かせた。キョウヤは相変わらず笑顔どころか挨拶すらせず、そのくせ、まるでそこにいるのが当然と言わんばかりにケンタたちと同じ車両に乗ってきたのだった。先日、ダークネビュラのアジトに乗り込んだときには、「大道寺への借りを返す」という一応の理由のもとに銀河たちと協力したキョウヤであったが、今回はダークネビュラ絡みではない。単に、いなくなった銀河を探す、それだけだ。こうして探しに行くことを、キョウヤはベンケイから聞いたのであろうが、ケンタの方は何ひとつ聞かされてはいなかった。「どうして、来たの?」―――現れたキョウヤを前に、ケンタはそう言いかけて、逡巡したのちに結局、音に出さず飲み込んだ。不確定要素が多すぎる旅だ、人数が多いほうに越したことはないし、余計な一言でキョウヤの機嫌を損ねては後々こちらが気疲れしてしまうだろうと、思ったからだった。キョウヤが以前よりも人間的に丸くなったことはケンタも感じていたが、それでもケンタは、まだ銀河のようにキョウヤと接することは出来ていなかった。どちらかというとキョウヤよりも、ベンケイの方に親しみを覚えるくらいだった。キョウヤと一緒で、うまくやっていけるだろうか。

列車の席に座ってからも、ずっと、キョウヤは無口だった。窓際の席に陣取り、頬杖をついて、ただ流れる景色を眺めていた。その態度が余計、話しかけるタイミングを奪っていた。
「……ねえ、ベンケイ」ケンタは小声で、隣に座るベンケイに耳打ちした。
「キョウヤは、どうして来たのかな。珍しいと思わない?」
ベンケイは眉尻を下げて、ううむと唸った。
「ワシにも分からん。キョウヤさんが『行く』と言ったから、お連れしただけじゃい」
「ふーん……」
ケンタは、気づかれないようにそっと、キョウヤを盗み見た。
「キョウヤも僕たちと同じで、銀河が心配なのかなあ」
「勝ち逃げされたくないだけかもしれんぞ」
「確かに、そっちの方が“らしい”けど……」
ケンタも薄々は感づいていた。キョウヤの、銀河に対する執着について。自分たちのような友情とは少し違う、銀河との繋がりについて。
「(キョウヤも、ひょっとしたら、寂しいのかもしれない)」
銀河が何も言わずに消えたことは、つまり、銀河の方からその“繋がり”を捨てられたようなものだった。繋がっていると思っていたのは、自分たちだけだった。こちらから追いかけなければ、銀河と会うことはもう二度と無いだろう。そして銀河はこちらのことを、すっぱり忘れてしまうかもしれない。竜牙との戦いでいくら傷を負ったとはいえ、銀河はこんなにもあっさりと、捨ててしまえるのだ。ケンタを、まどかを、ベンケイを、そして、キョウヤを。寂しくないはずがないと、ケンタは思う。執着していたのが自分だけだったと知ったら、尚更。
「(僕たちは同じなんだ)」
みんな、銀河がいなくなって、寂しいんだ。
小さな手を握り締める。必ず銀河を見つけなければならない。その想いもきっと同じだ。ケンタは初めて、キョウヤに親近感を抱いた。絆をくれるのはいつだってベイであり、銀河だ。またひとつ新たな絆が結ばれる予感を、ケンタは感じていた。
作品名:寂しさを追いかけて 作家名:ひょっこ