寂しさを追いかけて
列車の席に座ってからも、ずっと、キョウヤは無口だった。窓際の席に陣取り、頬杖をついて、ただ流れる景色を眺めていた。その態度が余計、話しかけるタイミングを奪っていた。
「……ねえ、ベンケイ」ケンタは小声で、隣に座るベンケイに耳打ちした。
「キョウヤは、どうして来たのかな。珍しいと思わない?」
ベンケイは眉尻を下げて、ううむと唸った。
「ワシにも分からん。キョウヤさんが『行く』と言ったから、お連れしただけじゃい」
「ふーん……」
ケンタは、気づかれないようにそっと、キョウヤを盗み見た。
「キョウヤも僕たちと同じで、銀河が心配なのかなあ」
「勝ち逃げされたくないだけかもしれんぞ」
「確かに、そっちの方が“らしい”けど……」
ケンタも薄々は感づいていた。キョウヤの、銀河に対する執着について。自分たちのような友情とは少し違う、銀河との繋がりについて。
「(キョウヤも、ひょっとしたら、寂しいのかもしれない)」
銀河が何も言わずに消えたことは、つまり、銀河の方からその“繋がり”を捨てられたようなものだった。繋がっていると思っていたのは、自分たちだけだった。こちらから追いかけなければ、銀河と会うことはもう二度と無いだろう。そして銀河はこちらのことを、すっぱり忘れてしまうかもしれない。竜牙との戦いでいくら傷を負ったとはいえ、銀河はこんなにもあっさりと、捨ててしまえるのだ。ケンタを、まどかを、ベンケイを、そして、キョウヤを。寂しくないはずがないと、ケンタは思う。執着していたのが自分だけだったと知ったら、尚更。
「(僕たちは同じなんだ)」
みんな、銀河がいなくなって、寂しいんだ。
小さな手を握り締める。必ず銀河を見つけなければならない。その想いもきっと同じだ。ケンタは初めて、キョウヤに親近感を抱いた。絆をくれるのはいつだってベイであり、銀河だ。またひとつ新たな絆が結ばれる予感を、ケンタは感じていた。