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猿丸のひとりごと

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「なんだよ。」

「何がだよ。」

「あっそ。」

「別に。」

馬村の辞書には
この四単語しかないのか、
というくらい、
馬村はあまり喋らない。

まぁそれは、俺が
ずっと喋ってるからだ、
と馬村は言うが、

他のヤツといても
やっぱりこれくらいしか
喋ってないと思う。

中学の時からそうで、
女子とは喋ってるのを
見たことすらない。

が、与謝野が転校してきて、
馬村は変わったな、と思う。

だいたい、馬村は、
俺が仕掛けなきゃ
自分じゃ何にもしてこない。

輪に入ろうともしなければ、
喋りかけるのはいつも俺。

一人で音楽聴いてるか、
一人で何か食ってるか、
一人でボーッとしてる。


だから与謝野が偽彼女になった時、
二人で間が持つんだろうかと
少し心配だったんだ。

でも思いのほか
普通に会話していた。

と言うより、
あんなに自発的に動く馬村を
俺は初めて見たかもしれない。


だからそのまま
付き合っちまえば?
って言ったんだ。


本当に付き合い出してから、
やっぱり言葉数は少ねえが、
馬村の表情がコロコロ
変わるようになった。

よく頬を染めている。

あ、嬉しんだな、とか、

あ、嫉妬してんだな、とか。

鈍い俺でも気づくんだから相当だな。

犬飼に言ったら、

「ん?馬村は前からああじゃない?」

って言うけど。

いや、俺には何考えてるか
全然わかんなかったぞ?

しかも馬村が人前で
女子を抱きしめるとかさー。

考えられなかったもんよ。

馬村が意外に熱いヤツだなんてさ。

いや、与謝野が火ぃ、つけたんかな。


馬村はマジで与謝野が好きなんだな、
と思うと、ちょっと羨ましい。

いや、かなり羨ましい。


あ、ほら。

馬村、喜び隠しきれてねーぞ?


あー、俺も恋してぇ!

作品名:猿丸のひとりごと 作家名:りんりん