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【タグ企画短編】蜂須賀と歌仙

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干し草を前に二人は立ち尽くした。一歩でも歩けば草履がべっとりと汚れ、着物の裾に泥のような馬糞のようなものが跳ねる。
 それを気にしない性質の者と組んだならば臭いも届かない距離から押し付ける案もあったのだが、蜂須賀虎徹も歌仙兼定も厩に臨んでは似た者同士だった。
「まったくありえない」
「同感だね」
 不快感に青筋を立てながらもまったくやらないという選択肢はない。それは彼らが人間ではなく、審神者によって呼び起こされた存在だからだ。馬の世話などという汚らわしい小間使いでも命令を果たさないことは難しい。そういう存在として仮初の生を与えられたのだ。不便極まりない。
 せめて泥―糞だと思うよりましだ―が跳ねないように慎重に足を踏み出し、畜生の前に干し草を放り投げる。草というものは嫌いではない。そよ風はしる草原で横になるのならばいい。だが家畜の餌として積まれたヤツはダメだ。獣くささと混じりあって身体がむずむずしてくる。
 不愉快に嫌悪を足したところに苛立ちを掛けたような心地で作業を進める蜂須賀に聞かせるともなく歌仙が呟いた。
「長曽祢くんだったらなあ」
 その名前を蜂須賀の耳は聞き逃さない。機敏な動きで振り返って馬糞のついた鋤を突き付ける。
「あの贋作がどうしたっていうんだ」
 眼前に迫った馬糞鋤に歌仙が呻き声を上げて後ずさった。馬当番を言いつけられたときには気持ちが一つになった気がしたのに、その親しみを遥か超えた恨みに心を焦がす。馬糞により言葉にとげが生えた。
「彼は働き者だからね、こんな汚れ仕事も進んで片付けてくれるんだ。この間一緒だったときは良かったな」
「……贋作にはお似合いの仕事だからね」
 ぴったりだと言う頬が引き攣っている。それを承知で歌仙は続けた。
「彼は体格もいいし真面目だからね。その仕事ぶりは大いに評価できる」
 馬糞の恨みは深い。
「馬たちも懐いているようだったしね。一緒に出陣したことはないが、きっと戦場でもいい働きをするんだろう」
「バカな」
「あんな見た目でも話してみると意外と風流のわかる男だったし」
「贋作に何がわかるというんだ」
「弟にも好かれているようだしね」
 そこで蜂須賀が鋤を振り上げた。歌仙もすかさず柄を握り直す。そして向けられた馬糞鋤に蜂須賀が顔を顰める番だった。
 後にその日のことを二人は口をそろえてこう言う。最低最悪の日だったと。二人は似た者同士なのだ。