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【タグ企画短編】ノイズカット/ウォッチ兄妹

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例えば手にした端末の検索バーに「LOVE」と打ち込んでエンターキーを押したとする。
 そうすると途方もない数の記事がヒットして、本来知りたかったLOVEなんちゃらかんちゃらってタイトルだったはずの音楽は干し草の中の針だ。
 次にもう一度検索バーを触ってキーワードを追加する。ちょど知りたかった情報が見つかるようにキーワードを調節するだろう。
 見たいもの見たくないものを問わずすべての視覚情報を脳みそに流し込んでくる不便な眼との付き合い方はそういうものだった。
 何でもかんでも目に飛び込んでくるって言うのは、それぞれ別の模様の入ったフィルタを何千枚も重ねてモノを見るような状態だ。見えすぎるのは何も見えないのと変わらない。霧に包まれた街・ヘルサレムズロッドを訪れる以前から、僕の視界は情報の霧で煙っていた。
 何にも見えなくなった妹の傍らで、僕は見えすぎるが故の閉ざされた視界にいた。
 目を開いていると、今まで見えなかった光や線や虫のようなもの、動植物のオーラや意味を持った残像、あらゆるものが目の前で動き回ってカラフルな砂嵐を見せられているようだった。脳みそがパンクする。
 以前テレビで紹介されていた、激しい光の点滅を見続けると光過敏症発作といって頭痛や吐き気などの体調不良を起こすことがあるらしい。僕はまるきりそれで、日常生活に支障をきたす程だった。
 目を開けるのが恐ろしくて目を瞑っていることもあった。元々糸目なもんで周囲には気づかれていなかったけど。気を休めるつもりで目を瞑っていたら窓から飛び込んできた近所の子供の投げたボールが頭にクリティカルヒットして結局頭に痛みを感じることとなった。
 僕の間抜けな悲鳴を頼りに盲目になって間もない妹は車椅子から必死に手を伸ばしてくれた。辛うじて届いた指先が頭を撫で、「ちゃんと前を見ていないからよ」と言った。
 そうだ。目を瞑っていたら妹の車椅子を押すことだってできない。彼女はもう見えない世界と前向きに付き合おうとしていた。眼の選択を迫られた時に動けなかったことを悔やみ続けていた僕がそれを口に出すと、彼女は何も見えていないのに「また目を瞑っているんでしょう?」と言い当てた。
「今あたしはどんな表情をしてる?ちゃんと見てくれないと困るわ」
 そっと目を開けた。ノイズだらけの視界の真ん中で、彼女は不安なんか何もないような顔で微笑んでいた。
「眼を開けて、あたしのトータスナイト」
 様々な光の模様に邪魔されていた視野が静まっていった。彼女の穏やかな顔に気持ちが集中していて、無意識に邪魔な情報を遮断していた。久しぶりに澄んだ視界に愛する妹の顔を焼き付けて、またすぐに視界はノイズに埋め尽くされた。視覚情報に絞りが利くという事実は僕の色彩豊かすぎる闇に光を差した。
 全てを見通せるのなら僕ら兄妹の眼を戻す糸口だって見つけられるんじゃないか。そう思って霧を越えて降り立ったヘルサレムズロッドで世界平和に尽力することになるなどとは夢にも思わなかったけれど。