銀新2「怪我新八」
「心配させて、すみません。」
いつもと逆の立場で、俺が新八を手当している。
「でも、これで銀さんが居なくなって僕らがどんだけ心配するか分かったでしょう?」
「俺は良いけど、お前はダメだ。」
こいつも、神楽も定春も…余計な傷を負わせたくないから、俺一人で依頼を受けていた事もあるのに…
「あんたがね、僕らを傷つけたくないってのは分かってるんですよ。僕はまだまだ銀さんに及びませんけど、
一緒に行って一緒に戦って、そうすれば、無傷は難しいかもしれませんけど、傷は減るでしょう?」
言い合いながら、新八の背中に塗り薬と包帯を。
腕には湿布を貼っていく。
事の始まりは、昨日の昼日中に新八が一人で依頼を受け、依頼先に出向いて起った事だった。
依頼内容は書類を昨日中に指定の場所へ届ける事。
依頼料もそこそこで、新八は独断で受けた。
指定場所に行くと厄介なグループに付きまとわれ、このままだと戻れないと判断し、万事屋にも実家にも連絡を入れずに、一人で大人数を相手してたらしい。
怖かった。
たった一夜の事、お妙から連絡が無ければ、俺も神楽も新八が家に帰ってると思ってたんだから…。
それが、新八が家に居ないとの連絡。
直ぐに、あいつの行きそうな所を捜そうとも、何も思いつかなった自分が情けなかった。
16歳の男なら、いきなり友達の家に泊まり込んで語り明かしてるかもしれない。
そう思ってもあいつの性格上無断外泊はしない。
何も心当たりが浮かばなくて、神楽も不安なのか、ずっと俺の着流しの裾を掴んでいた。
無言のまま、何時間もそのまま。
朝日が差し込む時間帯と共に階段を上がってくる音にいち早く気付いたのは定春で、玄関前に移動した。
朝方、万事屋に帰ってきた新八に、俺も神楽も無言で新八を抱きしめ、定春はその身体にすり寄った。
「この、だめがね。神楽様を心配、させんな、ヨ」
今にも溢れそうな涙を耐えながら、神楽はそれだけを言うと定春に声を掛け、お妙に新八の無事を伝えに行った。
二人だけになった俺たちはリビングまで移動した。
きちんと、新八の身体を見ると、腕には打撲跡、背中を少し切られたといわれてので見ると薄く刀傷が出来ていた。
「銀さんがいつも増やしてくる傷よりかは、全然少ないでしょう?」
手当が終わると、新八は俺の隣のソファに腰かけた。
「ほんとは、もう一日くらい心配させようかなって、思ったんですよね。でもきっと、姉上も神楽ちゃんもすごく心配してるだろうなーって思ったら帰ろうかなって。無駄な心配させるのは待ってる方もつらいですから」
「あの、新八くん?銀さんに対しては?」
「銀さんは、一晩くらい居なくても平気かなって思ったんですけど、全然違いましたね。銀さんにも心配掛けちゃいましたね。」
でも、と新八は続けた。
「さっきも言いましたけど、連絡無しに何日も居なくなられたらつらいので、これからは連れて行くか、連絡をきちんと入れる事を約束してください。」
「わかりましたよ。この件で、すげぇお前に心配させてるってわかったからな」
そうは言ったものの、心中では、そんな事はきっとできない。
また、無駄な心配をさせてしまう。
そんな事を思った。
俺は、何よりお前と神楽と定春が大事だから。
お前らが傷つくくらいなら、俺一人でどんな傷でも負ってやる。
それは、誰にも言わない、俺だけの決め事。