髪を結って
「だから〜、見られてもいいぐらいの気持ちでしてるんでしょ。愛されてるわね〜」
次の休みの日、すずめは、自分の部屋で馬村に後ろから抱きしめられるように座っていた。
肩越しの耳元で喋りかけられると、その度にすずめは背中にゾクゾクするような感覚があり、全く落ち着かない。
後ろから回された腕も、すずめのお腹の辺りに置かれているが、油断していると胸元に手を滑り込ませてくる。
「…っ、ん、もぅ…おじさん居るんだから…」
「おじさんも慣れるだろ?」
前に馬村が遊びに来た時、まさしく今と同じ体勢をしていたら、たまたまおじさんがお茶とお菓子を持って部屋に入ってきたのだった。
胸は触っていなかったが、それでもおじさんの額に怒りマークが見えたことは間違いない。
その時も、馬村は慌てるわけでもなく、立ち上がりお茶とお菓子を受け取って、また同じ体勢ですずめを抱き締めるように座ったのだった。
すずめは見えないところで戦われている気分になって、ヒヤヒヤした。
「あの時も、おじさんに絶対なんか言われると思ったんだから〜」
「別に俺なにもしてねーし」
そう言いながらも、首すじにキスをしてくる。
「ひゃ…っ」
してるじゃないかとすずめは怒りたくなったが、いつまた部屋に入ってくるかと思うと、大きな声は出せなかった。
首を舌で舐められると、口を手で押さえなければ、聞かれると言い訳出来ないような声が出てしまいそうだった。
「んっ…あ…」
馬村に触れられていると、いつも頭がぼうっとしてしまい、何も考えられなくなってしまう。
(おじさんがいるのに、ダメだって分かってるのに…)
「…キスして」
馬村の首に顔を埋めながら、同じようにように首すじをペロッと舐めると、馬村の身体がピクリと震えた。
「ったく、そういう誘い方どこで覚えてんだよ…」
唇に深く口付けながら、ゆっくりとすずめを床に押し倒した。
「んっ…ん」
すずめも馬村の背中に手を回すと、その後に待っている快感を期待してしまう。
「今日は、キスだけな…」
案外あっさりと唇を離される。
すぐに離れてしまった唇が寂しくて、濡れた瞳で馬村を見つめる。
「そんな顔すんなっての…結構我慢すんの大変なんだよ…」
すずめに後ろを向かせて、床に寝転んだせいで乱れた髪の毛を直す。
始めはただのポニーテールだったはずだが、手直しの後は、左右が編み込まれていた。
「どんどん…うまくなってくね…」
鏡越しに、すずめの髪を結っている時の馬村が、何とも言えず楽しそうで、すずめの実家で雪だるまを作った時のことを思い出し、ほっこりとした気持ちになるのであった。
fin