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君が為春の野に出でて花を摘む

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「あのさァ」


鼻クソをほじりながら
近寄って来た銀髪を
さも嫌そうに避けたのは
別に
鼻クソがうんぬんなワケでは無かった

高杉晋助という子供に取って
何を置いても大切な
尊敬して止まぬ
松陽先生

その家に
最近引き取られてきた子供
先生とは縁もゆかりもないらしい子が
無条件に疎ましかっただけだった

「ア?ナンで逃げンの?」
「別に逃げてねぇ。」
「下がったじゃん。後ろ。」
「下がってねぇ。」
「ナンで嘘つくのォ?」
「嘘なんかついてねぇ!つか鼻ほじんな!」
「だってェ。でけェの取れねェんだもんよォ。」
「今、取ろうとする事ないだろっつ!」
「今取らねェとどっか行っちゃうだろォ?!」

そこで何故か掴み合い
二人揃って先生に残されて
誰も居なくなった教室で
机を前に二人で正座

「さぁ、ではもう一度訊きますよ?」

喧嘩を止めた時
大筋は聞いたもののと先生が問う

「先に手を出したのはどちらですか?」
「高杉でェす。」

すかさずに言う銀時を
正座の上で握った拳
ぎゅっと力を入れ丸め
キッと横目で睨む晋助

「本当ですか、晋助?」
「・・・ハイ先生。」

神妙に
答える子供は先生にだけはしおらしく
ごめんなさい、と
諭される前に深く下げる頭を
先生の手が優しく苦笑して撫でる

「私に謝るのでは無いでしょう、晋助?」

ね?と微笑む先生を
チラと見上げる
その瞳
薄い唇ヘの字に曲げて
ぷぅと膨らむ
丸い頬

「・・・謝りたくありません。」
「おや、どうして?」
「そうだ、謝れよォ高杉ィ?」
「銀時。少し黙っていなさい。ねぇ晋助は」

どうして謝りたくないのです?

微笑みかけられたじろいで
子供の頬がほんのり染まる

「・・・ソイツ鼻クソほじくってました。」
「銀時が?」

こくんと頷き黒髪が
顔を隠すよに伏せられる

「それは少し相手に失礼ですね。本当ですか銀時?」
「だってェ。でけェの取れそうだったしィ。」
「それでも、人に面と向かってその態度はいけません。」

解りましたか?

銀髪のクセ毛頭に置かれる手

黒髪の下から覗く目が
光を放ち
それを見た

それでは
二人とも良く無かった所があるのは
解りましたね

優しく諭され頷く頭
二つの頭に手を載せて
先生は楽しげにフフフと笑う

「じゃあ、二人とも。少しお手伝いしてくれますか?」

ハイ先生と飛びつくように
顔を上げる黒髪と
えェ面倒くせェなと
横向く銀髪

「ほら見て?床の間の花が少しくたびれて来ています。」

だから二人で

「お花を取って来てくれますか?」

勿論です先生と弾む声の一方で
そこらに咲いてるペンペン草でいーじゃんかと
面倒そうに愚痴る声

結局は
さっさと来いと黒髪に
引かれて押されて出掛ける野原




「ちょっと待てってェ。」
「さっさと歩け!」
「つかてめェ、走ってんじゃんかよォ?」
「そう言うお前こそだろ!」

少し小柄な黒髪は
負けず嫌いも甚だしくて
銀髪に
負けるのが我慢できずに走り出す

抜きつ抜かれつ春の野に
蝶々の様にひらひらと
舞う黒髪と
銀髪の
そのうち弾ける笑い声
花摘みのはずの春の野で
追いかけっこに
早変わり

「ちょっと待てェ!テメ、オレは刀持ってンだぞ!」
「知るかよ!邪魔なら置いてきゃいいだろ!」
「なァに言ってンだ!イツ要るか解んねェだろ!」
「そんなもんよか頭使えよバーカ!!」
「あっ、テメ!待ちやがれェ!」

走って
走って

春野原

最後は土手で滑ってコケて
二人揃って笑って転げ
土手の下までごろごろと

絡まりながら
ゴロゴロと



「あー!」

もう走れねぇ疲れた!と
額の汗を手で拭い
黒髪散らせて笑う声
いつもの不機嫌何処へやら

「オレもォ、つか見かけによらずすばしこいなテメェ。」
「お前も意外と足速ぇじゃん、銀時。」
「そりゃ逃げ足速くねェと」

殺されちまうじゃんか戦場じゃァ

事も無げに言う銀髪を
横に並んだ黒髪の
澄んだ黒目がハッと見た

「・・・お前」

先生に
戦場で拾われたって本当か?

遠慮がち
問うた瞳を真っ直ぐ受けて
そうだと答える赤茶の瞳

「で、さァ。オレも訊きてーコトあんだけど。」
「・・・何だよ。」
「つか、今日そもそもソレ訊こうと思ったンだよねェ。」
「だから何だよ!」
「お前さァ」

もしかしてオレが



「先生ン家に居ンのが気に食わねェ?」



ズバリと突かれた核心に
ゆらりと揺れる黒目見て
あァやっぱりと苦笑する
子供の瞳は笑ってた



「やっぱ、そうかァ。」
「・・・別に。」
「悪ィなァ。オレみてェなんが居着いちまってェ。」
「別にいいって。お前悪くないだろ。」
「つかオメーいつもオレん事睨んでんじゃん。」
「睨んでねぇよ。」
「睨んでんだろ思いっつ切り。」
「俺は目つき悪ぃんだ。」
「アァ・・・それはそうかもォ。」
「納得すんな!」
「笑えば可愛い顔してンのに。」
「はぁ?!」
「折角キレーな顔してんだしさァ。笑えよもっと。」
「イミ解んねぇ事言うな!」
「なんでェ。ホントの事言ったのにィ。」
「黙れ天パ。」
「ワァ差別用語ォ。ちょォっと自分がサラサラと思ってェ。」
「触んな!オイ人の髪勝手に触んなって!」
「だってコレちょぉ気持ちイイ。」

サラサラァ、と
嫌がって避けるのを追いかけて
汗ばんだ髪をかき乱す
そのうちに
走り疲れた小柄な方は
撫でられる髪に誘われる眠気
ふわりと一つ大欠伸

「おい銀時」

てめぇ
そこらで花摘んで来いよ

「俺ここで待っててやるから。」
「ハ?何言ってンの?しかも何で上から目線ん?」
「いいから。行けって。」

コレ
俺がここで番しててやるからと
銀時の刀を強引に奪い
くるりと丸くなる姿
まるで仔猫がじゃれつくように

「ちょっとォ?高杉ィ?」
「行けって・・・」


待っててやるから

呟くように言い置いて
すうすう眠る草の上

しょうこと無しに溜息ついて
よっこらしょっと立ち上がり
着物はたいて銀髪は
花は何処だと辺りを見回す

そしてしばし

摘んで帰った春の花
悪戯心がチョイと湧き
一本取った白い花
眠る小耳にちょこりと挿した

「高杉ィ、ホラ、帰ェるぞ?花取ったしィ。」
「んん・・・まだ・・・。」
「まだじゃねェの。先生待ってンぞ?」
「んん・・・そうだな・・・。」

眠い目擦って半身起こし
刀を杖に立ち上がり
欠伸しながら歩き出す
黒髪に一つ
白い花



あのな銀時

まだ眠そうに歩く子が
欠伸混じりにポツリと言った

俺別に
てめぇが嫌いなワケじゃねぇと

ただ
先生と住んでやがるてめぇに
ムカつくだけだ

そう言った




「ハァ?何それェ?」
「何じゃねぇよ。そんだけだろ。」
「イミ解んねー。」
「じゃあ解んなくていいだろ。」

そんな会話を交わしつつ
二人で歩く
夕暮れ道を

やがて夕陽の向こうから
白い人影ゆらりと揺れて
それに気付いた高杉が
瞳輝き走り出す

その拍子
ひらりと落ちた白い花
銀髪の子は拾い上げ
そっと鼻先
かぐ香り

あの子の髪の
その香り




お迎えに来た先生に
花を渡して3人で