放課後の教室で
「ったく…仕方ねぇな…じゃあ、おまえからキスしてくれたら許す」
「え…」
「誰かさんは恥ずかしいって、名前も呼んでくれないし?」
馬村はわざと拗ねたように、横目でチラリとすずめを見ると、頬を赤くして俯いていた。
「………」
「……き」
「ん?」
「だ…いき」
絞り出すように言うと、すずめから頬にキスをした。
「卒業したら誰も知ってるやついないし、恥ずかしくないだろ?だから、これからは呼ぶよな?すずめ?」
「…はい、頑張ります…」
馬村がかがんで軽く唇を触れ合わせた。
「最初で最後の、教室でのキスだね」
そう言ってすずめからも、馬村の首に腕を回して口付けた。
「で、誰にリボンあげたわけ?」
「だから、名前わかんないってば〜」
2人は笑いながら、どちらからともなく手を繋ぎ帰路に着いた。
卒業しても、ずっと変わらずあなたといられますように。
すずめはそう願いを込めて、手を強く握る。
fin