恋のから騒ぎ 床ドン編
続きではありません。短編集とでも思ってください。
馬村×すずめ 高校2年生冬。
床ドンを書きたくて(笑)
恋人同士になって、初めてのクリスマス。
もっと甘ったるく過ごすのかとドキドキしていたすずめだったが、残念ながら今年もみんなでクリスマスパーティになってしまった。
それはそれで楽しいので、特に不満はないのだが。
去年と違うのは、ゆゆかが来られたことと、馬村が彼氏になったこと、犬飼くんとツルちゃんが付き合ったこと。
(みんな、色々変わっていくんだな…)
「ゆゆかちゃん、今日は土牛先輩と会わないの?」
すずめが聞くと、ゆゆかはこのあと会いに行くに決まってるでしょ?と言った。
(今日めちゃくちゃオシャレしてるもんな〜)
すずめも、クリスマスぐらいはと気合を入れて、ゆゆかに選んでもらった服を身に付けた。
胸元が大きく開いた、手が隠れるぐらいの大きめのセーターに、プリーツスカートを履いていた。
もちろん髪の毛はゆゆか作でアップにしてもらった。
(これ、中のキャミも微妙に胸が見えそうなんだよね…あんまり屈んだりしないようにしよ)
「で、あんたはこのあとどうすんの?」
「え…どうすんのって帰るんじゃないの?」
「はあ!?何言ってんの?8時に解散する理由は、みんなそれぞれ2人きりになりたい人がいるからでしょうが!あんたもちゃんと誘いなさいよ!いつも馬村くんにばっかり誘わせてんじゃないわよ」
「は、はい…」
ゆゆかはまったくもう手がかかると、ブツブツ言いながら亀吉たちのところへ行ってしまう。
すずめは、馬村を見るが犬飼と話をしていて、割り込んで入っていくことは出来なかった。
すずめだって、2人きりで一緒にいたいという気持ちはあるが、それをどう表現していいのかまだ分からずに、よくゆゆかに怒られてしまう。
結局、解散の時間になっても話しかけることが出来ずに、部屋の片付けと帰りの支度をする。
自宅を開放してくれた亀吉に礼を言って、外に出ると、後ろからポンと肩を叩かれた。
「送ってく…」
「馬村…」
結局馬村から誘わせてしまったと、肩を落とした。
犬飼はもちろん鶴谷を送っていくようで、ゆゆかは嫌々猿丸に送ってもらうらしい。
「じゃあね〜みんなバイバ〜イ!」
亀吉が家の中から手を振り、すずめもバイバイと手を振り返す。
「ね、去年見たクリスマスツリー見に行く?」
2人で歩きながら、気を取り直してすずめが思い付いて提案すると、すでに調べてあったのか馬村に却下される。
「あそこ今工事してるらしいぞ」
「えぇぇ…残念…じゃあさ…」
立ち止まって、馬村を見上げる。
「寒いし、うち…来る?おじさんいるけど、怒られる時間じゃないし…」
「おまえがいいんなら行くよ」
「ただいま〜!おじさーん、馬村連れてきたよ〜」
「おかえり。いらっしゃい、馬村くん久しぶり」
予告なしの訪問に驚くが、諭吉は礼儀正しく挨拶をする馬村のことを割りと気に入っていた。
「こんばんは。お邪魔します」
馬村は軽く頭を下げ、靴を揃えてあがる。
「何か食べる?持っていこうか?」
諭吉が部屋へ行く口実を何か作ろうと聞くが、分かっているのかいないのか、すずめに断られる。
「いっぱい食べたからいらな〜い。お茶は自分で持って行くからいいよ。馬村、先に部屋行ってて」
「ああ」
すずめは、温かいお茶の準備をしながら、もう少しだけ一緒にいられることを嬉しく思った。
すずめがお茶を持って部屋に行くと、諭吉に開けておきなさいと言われたドアをパタンと閉めてしまう。
いつもの癖で、もちろん意図的ではないから、諭吉も何も言えない。
「お待たせ〜」
「ああ、悪いな…」
「馬村、お腹いっぱい…だよね?なんか、おじさんがちょっとしたもの作るとか、なんとかって言ってるんだけど…」
馬村は、まあ部屋に行く口実をだろうなとすぐに勘づくが、すずめはお腹いっぱいだって言ってるのにさ、と文句を言っていた。
「別にいいよ。食えなくないし。おまえのおじさんの料理美味いし」
すずめは馬村の隣に腰を下ろすと、急に緊張して、何を話せばいいのか分からなくなってしまった。
何秒間かの沈黙が続くと、
「今日…誘ってくれて嬉しかった」
頬を赤く染めて、ボソリと馬村が言った。
「わ、私も…もうちょっと、一緒にいたかった…から」
そう言ったすずめの頬も真っ赤に染まり、緊張のあまり肩と肩が触れ合っただけで、ビクリと身体を仰け反らせてしまう。
「わっ…」
「ちょっ…大丈夫か…って、うわっ」
そのままバランスを崩したすずめは、後ろに倒れ込むが、助けようとした馬村のシャツを力一杯掴んでしまい、一緒に倒れ込む形になってしまった。
「痛い〜!馬村ごめ…ん…」
「大丈夫か…?」
すずめが床に寝転がるように倒れると、すぐ近くに馬村の顔があり驚くが、気が付けばすずめに馬乗りになっている馬村はもっと驚いて、慌てて離れようとする。
「悪い…」
すずめは離すまいと大輝の腕を掴み言った。
「ちょっと…だけ…」
「えっ?」
「触ってもいい?」
手を伸ばし、馬村の髪に触れると思っていた通り柔らかくフワフワで、気持ち良くてずっと触っていたくなる。
「ふふっ〜、フワフワ」
何度も両手で髪を梳くと、馬村がすずめの唇を塞ぐ。
「…っ」
いつのまにか、髪の毛を触っていた手は背中に回り、すずめも自身の行動に驚きながらもそれを受け入れた。
「ん…っ、ん…」
ちょうど馬村がチュッと音を立てて唇を離すと、ノックと同時にドアが開いて、額に怒りマークをつけた諭吉が部屋に入ってきた。
「はいはい。君たちどうして寝転がっているのかな…起きようね」
「お、おじさん…これは、ちょっとバランスを崩して…」
すずめが言い訳するように、慌てて起き上がった。
「そんな少女マンガみたいなこと起きるわけないでしょ?馬村くん、君今日はもう帰りなさい…んで、すずめはお説教」
「本当だってば!ねえ、馬村!」
「まあ、本当だけど…。ほどほどにしてやってください。こいつ悪くないんで…お邪魔しました」
馬村はすずめにまたなと言って、部屋を出た。
(マジ、生きた心地しねーわ…)
すずめとの、距離を縮めるのは前途多難だなと馬村は歩きながら考えた。
「すずめ…俺は、馬村くんのこと信用してるけど、女の子なんだから、色々気を付けなさいよ」
馬村が帰ると、ため息をつきながら諭吉は諭すが、せっかくもう少し一緒にいられると嬉しく思っていたのに、諭吉に邪魔をされ、すずめの機嫌はすこぶる悪い。
「何を気を付けるの?」
「な、何をって…だから、ほら、色々と」
逆に聞かれ、諭吉は思わず口籠った。
「色々ってなに?どこまで気を付ければいいの?」
口を尖らせ拗ねたように質問攻めにしてくるすずめに、諭吉が白旗を上げた。
「もういいから。分かったから、部屋行きなさい!」
すずめは諭吉に見えないように、ペロッと舌を出すと、馬村の触れた唇をそっと撫でた。
fin
作品名:恋のから騒ぎ 床ドン編 作家名:オダワラアキ