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縋るにはあまりにうつくしく

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 例えば輝いて見えるのなら、恐らくは本当に輝いているのだ。物質的に、或いは自らの視界の中で。
 きっと後者なのだろう。聖人でも神でもない、変哲もない人間がただ笑っているだけ。怒っているだけ。泣いているだけなのだから。
 あっさりと自らの全てを賭けて他人の為に怒っていた男は、あっさりと元の平穏を取り戻して、雄二、と静かに言った。足元に転がる下種の残骸を作った相棒の癖に、俺を置いてあっさりと。酷く熱を持っていた瞳は凪いでいて本当に同一人物なのかと疑うけれど、残念な事に俺がこいつを見間違える筈がない。俺の名を呼んで以降何も喋らないので長い沈黙が横たわった。嗚呼、俺が口を開くのを、待っているのか。口を開くのも億劫で視線を通した。そうしてやればやっと、何を心配していたのか知らないが、安心したように、笑う馬鹿。

「かえろう、雄二」

 目を閉じたのは、お前が眩し過ぎたからじゃない。
 (けれどお前を見てやっと世界に色が射したのは事実だ)




【縋るにはあまりにうつくしく】