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手嶋野家の日常 ~家族旅行編~【サンプル】

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1.準備
 親に押し付けられる形で預かった金を携えながら、妹の手を引いて訪れたのは大型ショッピングセンターのカバン売り場だった。いつ手を振り払って駆け出すかわからない幼稚園児をしっかりと捕まえながら目的の場所まで来られたことに、尚は自分で自分を褒めたくなった。
 子供用リュックが並ぶ棚の前で妹を放し、飾られた商品を眺める。色とりどりでカラフルなカバンはサイズが小さいだけで、デザインは大人向けの商品と遜色がなかった。チャックとプラスチックの簡素な留め具だけでなく、子供心をくすぐるデザインのボタンが使われたカバンもあり、尚の小さな頃に比べておしゃれになったものだと感心する。
 色んな種類がある中、ポケットに大きく花が描かれているだけのシンプルなデザインのリュックを手に取った。大きめのチャックは子供でも簡単に開け閉めしやすく、ポケットの多さも相俟って機能的に申し分ない。
「奈々、これなんか――」
 妹がいるはずの方へ向けば、彼女はカラフルで賑やかな模様のリュックを小さな腕で抱きしめていた。
「おにーちゃん、これがいい」
 尚はしゃがんでそのリュックを確かめる。汚れやすそうな生地に、留めるのに力が要りそうな金属製のボタン。さらにそれを開くと大きな口は紐で結ぶタイプだった。どう考えても、小さな子が扱うには骨が折れるリュックだ。
 眉間に皺を寄せて、どうするかを考える。このままでは、旅行中、上手くリュックを使えず不機嫌になりながらリュックやってと頼んでくる未来しか見えない。
「それと同じ模様ならこっちの方が良くないか?」
 最初に尚が手に取ったリュックと同じ形だけれど、奈々の持っているリュックに似た柄をしているリュックを手にとって見せる。奈々はじーっと睨み付けるように尚の持っているリュックを見つめた。
「やだ、こっちの方がかわいい」
 小さな腕でぎゅっと押しつぶすように抱きしめて、絶対に手放さないという強い意志表示をしてくる。睨むようにこちらを見上げてくる妹に、尚はただため息しか出ない。