夕焼けのまどろみ
改造される度、思い出す記憶。あたしだけ、なのかな。
楽しい思い出より、痛くて冷たい感覚の方が増えていく。皮肉にも、それを忘れていられるのは戦っているときだけ。
痛くなる前に、撃てばいい。
冷たいと感じるより、砲撃戦の熱があたしを灼けばいい。
もしかしたら、あたしより早く強くなって、何故か日本語がたどたどしくなってしまったあの子なら、何か知っているのかも知れない。けれど、あたしは訊かなかったしあの子もあたしをじっと見つめるだけで、何も言わなかった。
***
ベッドの上で目を開いたあたしを見て、提督が少し動揺したのがわかった。この人は、司令官なのにあんまりポーカーフェイスが得意じゃないんだよね。そこがいいんだけど。
「夕立、お前……」
「え?」
改造、終わったんだよね? 顔に何かついてるのかな。日の沈みかけた水平線とあたしたちを区切る窓ガラスを鏡代わりにしようと首を捻る。びくりと背中に何かが走り抜けた。
「……っ」
……何処かで見たことある、瞳。
ああ、この前、あたしが沈めた子も、こんな目をしていた。
指先に絡まる髪にもまとわりつく、色。
「あははっ。こうやって髪や目の色が変わると、見るからにニューバージョンっぽくってステキ!」
「夕立?」
海に映える夕焼けの赫を手に入れて、あたしはもっと強くなる。闇色の碧に飲み込まれる、そのときまで。
「さぁ、ステキなパーティーしましょ?」