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失われた感情(もの)①

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「起きろー!!!」
「!!」
詩音の声だ。
「ふぁぁ〜 なんだ詩音か〜 今準備するから、前で待っててくれ〜」
「もー!悠雅ったらー!私が居ないとどうするの!早くして!」
と、これが俺の朝だ。
いつも学校に行くときに起こしてもらっている。
まぁ、そんなこんなで俺は詩音の待つ玄関にでた。
そのまま二人でいつも通り高校を目指した。
「悠雅はどうして自分で起きれないのー!」
「眠いから」
「何それー!明日から起こさないよー!」
「それは困る!!」
だいたいこの会話んしていると、
「おっすーー!」
この後ろのでかい声は海斗だ。海斗は俺らと同じクラスメイトだ。
「お二人さんいっつも仲良しだねー」
「別に仲良しってわけじゃないよ!ただの幼馴染みなだけ」
するとそろそろ
「みんな〜おはよ〜」
とこの寝ぼけた女の声が聞こえる。この女は玲奈だ。
「おはよー」
「おっすー!」
「玲奈ちゃんおはよー!」
と大体この四人でいつも学校に行ったり、放課後遊んだりしている。
因みに海斗だけが隣のクラスで、俺と詩音、玲奈は同じクラスだ。
この日もいつも通りダラダラした日を過ごせると思っていた。
しかし、この日は不運だった。
「おい、ちょっと急がねーと遅刻するぞ!」
「あ〜確かに〜やばいね〜」
「みんな走るわよ!」
「詩音そんな走るなよ こけるぞー」
「もう、バカなこと言ってないで悠雅も急ぐよ」
「はいよー」
そう、この最後の角を右に曲がれば、俺らの高校に着くはずだった。
が、急に大きな声が聞こえた
「あぶなーーーーい!!!!!」

キィィィィィィィィィ!!!

一瞬俺は何が起こったのかわからなかった。
目の前には血だらけの詩音の姿と、玲奈を庇いながらギリギリでトラックに引かれなかった海斗の姿、海斗の腕の中で震えてる玲奈の姿があった。
俺は、一番後ろでダラダラしていたから、俺だけは無傷だった。
そして、何より詩音だけが血だらけになっている。
急に我に返り、俺は詩音の元へ走った。
「詩音!詩音!おい、詩音!」
返事がない…目も開かない…
周りには野次馬であろう人々と少し遠くから救急車であろう音が聞こえた。
俺もその音を最後に絶望だけを感じ、その場で意識を失った。




「悠雅、起きなさい」
聞いたことのない声だった
「うっ、ここは…」
「やっと気づきましたね、ここはあなたの夢の中。
私は一度だけ人の命を救うことができる神よ」
一瞬何を言ってるのか理解できなかったが、さっきの絶望を思い出し俺は
「おい、本当か!詩音を!詩音を助けてくれ!」
「落ち着きない!私はその詩音という女性を救うことはできる。が、しかし私が救ったものは、感情や感覚を忘れる。命はあるが、喜び、怒り、哀しみ、楽しみなどの感情が全て忘れ去られる」
「なんだよ、そんなの死んでるのと同じじゃないか」
「いえ、そこであなたの出番です。あなたが忘れた感情を思い出させてあげるのです。これから先の色々な出来事を通し、詩音をもとのあなたの知っている詩音に戻すのです!」
「俺が、詩音を救えるのか?なら、頼む!詩音を!詩音を助けてくれ!」
「わかりました。では、また会える日まで」


「はっ!今のは! 」
俺は急に目を覚ましたと同時に絶望を思い出し
「詩音は!詩音は!」
「目覚めた途端騒ぎすぎた。とりあえず落ち着け!」
ゴンッ!
その一発のおかげで、やっと落ち着いた。俺のことを殴ってくれたのは海斗だった。
「やっと気づいたか、どーやらみんな無事だったみたいだぜ」
「詩音もか!詩音も大丈夫なのか!」
「あぁ、もちろん。お前が庇ったじゃないか」
「え、俺が庇った… 詩音はどこに?」
「隣の病室だよ」
「少し行ってくる」
とりあえず部屋を後にして、詩音の部屋へ向かった。
どーやら、俺たちは全員無事だったようだ。俺の記憶では確か詩音は血だらけの悪夢のような記憶があるのだが、みんなには違う記憶があるようだ。
「ここかが詩音のいる部屋か」
コンコンッ!
「入るぞ〜詩音〜」
良かった、無事だった。普通の詩音だ。
「悠雅さんですね。何か私にようですか?」
「え、詩音どうしたんだその話し方?」
「すいません、私の話し方がどうかしましたか?不快にさせましたか?」
「い、いや、そんなことはないが」
感情を失うってこの事だったんだ。
そーだったな、俺が詩音を救わないとな。
「あの、悠雅さん、夢とはいったいなんの事ですか?私に用はないんですか?」
「あ、すまない。少し顔が見たくなっただけだ。これで失礼するよ」
実際に変わり果てた詩音の姿を見て、流石にキツかった。
俺は詩音を救えるのか…さて、どうしたもんか…

ここから、俺達の少し変わった高校生活が始まる。
作品名:失われた感情(もの)① 作家名:綺悠