小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

平成27年で失われるものは?

INDEX|1ページ/1ページ|

 
これはどこか別の世界の話。

「……では、新しい年号を発表します」

会場ではカメラを構えた記者たちが息をのむ。

「新しい年号は……」




「 親父 」

親父元年。
世界のオヤジたちはあっけにとられた。



親父1年。

年号のせいなのか、親父が活発になっていた。
まさに空前の親父フィーバー。

「いやあ年号が変わっただろ?
 なんだか自分が主役になったみたいで嬉しくってね」

「まだまだ頑張らないとって思うんだよ」

「なんだか年号が親父になってから、
 よくオヤジも見かけるようになったね」

テレビの取材にオヤジ達は楽しげに答えていた。
親父の活性化で一気に好景気へと傾いていた。


親父10年。

このころになると、すでに問題視し始める人も出始めた。
街はあまりに親父が増殖してしまっている。
加齢臭が太陽の光をさえぎってしまうこともあるほどに。

"原因は年号にあります。
 年号にはスピリチュアルでハイパーな力があるのです"
   オカルト評論家 嘘月 泰造


"世界の親父は毎年90%のペースで増えています。
 まるで地面から親父が湧いて出ているようです"
   人間コラムニスト 適当 言子


テレビでは毎日のようにオヤジを扱い、
街でも害虫のような視線がオヤジに注がれていた。

けれど、親父はそれでもへこたれない。

「だって、今年の年号を見てみろよ。
 俺たちが主役になっていいってことなんだ!」

その1点さえあれば、親父はどんな扱いにも耐えられた。



親父26年。

ついに増えすぎた親父をどうするのか話し合われた。
もはや総人口の90%が親父で占められ、
視界には必ずオヤジが入ってくる異常状態。

しかし、それでも……。

『オヤジへの対策に尽力することで合意しました』
『オヤジの減少推進で合意しました』
『頑張るってことで終わりました』

具体的な打開策は出せないまま
ずるずると親父は世界を埋め尽くしていった。

「ああ、もうこの世界は終わりよ……。
 年号を親父になんてしてしまったがために……。
 私たちはみな親父によって圧死させられてしまうのよ……」



親父27年。

「緊急ニュースです! 親父の数が急速に減っています!」

なんの前触れもなく親父は減り始めた。
急病、事故、神隠し……理由はさまざまだが、
まるで神様が増えすぎた親父を間引くかのように。

「ああ、これで元通りね!」

すっかり親父は元の適正な数にまで減り、
なにも対策しなかった親父事件だがあっという間に収拾した。

「いったいどうしてだろうね」
「きっと27年で年号の力は失われるのよ」
「そうなのか? 信じられない」

親父で頭を悩ませなくなったので、
今度は原因を探すことに時間を使い始めたものの
いくら調べての27年目で減った理由はつかめなかった。


ただ、原因はわからなくとも
年号に不思議なパワーがあることは国民誰もが身に染みた。

「早く年号を変えましょう!」
「そうだ! 次いつ親父が増えるか!」
「もしかしたら、これは次の波への前触れかも!」

親父の恐怖に襲われた人々たちの後押しで、
すぐさま年号は親父から切り替えられることに。

今度は「お袋」とかにならないよう、
しっかりとまともな意味になるように。


親父28年。

「……では、新しい年号を発表します」

新しい年号はもう二度とあんな悲劇が起きないよう。
平和と平穏の思いをこめて作られた。



「新しい年号は 平成 です!」


それから世界は27年間平和になった。