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汚物で築く僕らの楽園

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眠れなかった。
 うぞうぞと体のまわりに何かが纏わりつくような錯覚すら覚えたので、仕方なく起きた。水でも飲もうと、キッチンへ向かう。
 向かう途中の廊下に、ボールくらいの大きさの海が浮いていた。
 と思ったらそれはウルビダの頭だった。

「やあおはよう、ウルビダ」
「深夜三時だが」
「やだなあ、知ってるよ。ウルビダは何故起きてるの」
「気持ち悪い夢を見た」
「あは、かわいい」

 冗談を飛ばすと、鋭く尖った殺意を孕んだ視線が帰ってきた。さっと顔を傾けて避ける。
 にこにこ、ウルビダと話すときはなんだか愉しくなって笑ってしまうのが俺の癖。

「そういう貴様は何故起きている」
「眠れなかったんだよ」
「ふん。寝不足で体を壊してしまえばいいんだ。そうしたら」
「「私がキャプテンになれる」?」

 ウルビダの台詞と俺の台詞がばっちり重なった。容易に想像できた台詞だ、しかしここまでばっちり合うなんて。
 ウルビダがはっと息を呑んだのがありありとわかる。目をぱちくりさせて、可笑しいの。笑い飛ばしたいが今は深夜、静かにしないとね。

「君の思考はわかり易いねえ。可笑しい可笑しい。俺のことそんなに嫌い?」
「黙れ……っ」
「安心して。俺も」

 海色のウルビダの髪をさらりと捲り、露出した耳に口を寄せて、紡ぐのは、

「生意気で低能な君のことなんか大嫌いだから」

 汚い言葉。
 わなわなと震えはじめたウルビダを尻目に、キッチンへ向かう。
 一回だけ振り向いて、おまけにもう一度汚い言葉を投げてやった。

「君が見た気持ち悪い夢っての、どうせ俺と君が愛し合うような夢でしょ」

 ウルビダの反応を見ないまま踵を返して、キッチンに入る。
 冷蔵庫の中のミネラルウォーターのボトルを開けようとしたときに、ばたばたと何かが走る音が聞こえた。


 俺の名前はグラン。
 嫌いなモノは生意気な女、好きなコトは生意気な女いじめ、
 好きな色は海色。