箱庭
「お前の手が熱いだけだ」
小さな部屋に閉じ込められてやることもないので寄り添っていた。窓から外が見られれば良かったが、この部屋の窓はとても高い所についていて、肩車をしてみても窓枠に手すら届かなかった。
「何日経ったっけ?」
「三週間と四日」
「あと少しで一カ月か」
「そうだ、よくできました。花丸をやろう」
「舐めてんのかテメエ」
カオスとして雷門と戦い、グランに諌められてから、ガゼルとバーンはこの部屋に閉じ込められていた。最初のころこそ勢いよく壁やら格子やらを蹴ったり殴ったりして出せ殺すぞと叫んではいたが、誰からの返事もないので、二人はこの部屋からの脱出を一週間で諦めたのである。
ここはどこなんだろう、誰もいないのかな、チームメイトは無事だろうか。さまざまな思考が巡っていたのは二週間目まで。
今となってはもう何かをする気力もなく、何処からか出される食事を胃に通して二人で力なく寄り添うだけとなった。
「……なあ」
「なんだよ」
「俺をひとりに、するなよ」
「ひとりに仕様が無い」
「ああ、そういやそうだな」
「馬鹿者」
この小さな部屋の中で唯一寄りかかれるものは、お互いの身体しかなかった。そしてそれがなくなるのがたまらなく怖くなる。
大嫌いだったはずの相手に身を任せれば、少しでも安らげた。その安らぎが麻薬の様によく効くので、依存する。
二人は今日も寄り添って眠り、同じ夢を見るのだ。
とある神様がこの部屋の鍵を開けるのは、もう少し先のお話。