松蛍でラ/ブデ/ス。パロ
立花が家に帰り着くと、松岡がアパートの玄関前で煙草をふかしていた。
「お、蛍、今帰りか?」
「松岡さん、こんにちは」
いつもと変わらない挨拶を笑顔で交わしつつ、松岡の顔に探るような色が差す。
「なあ、蛍――……」
「はい?」
しかしそれも一瞬のことで、すぐに松岡は普段通りの表情を作った。
「やっぱいいわ、何か恥いし」
「え、何ですか? そこまで言ったなら言って下さいよ」
じゃれあうようなやり取り、
「えー。じゃあ聞くけど、さ」
なのに、
「今……、殺したい奴っているか?」
瞬間的に戦場のような殺伐とした雰囲気に変わる。ざらりと肌を舐めていく殺気、否、殺意。
「そんなのいるに決まっているではないですか!」
「マジかよ!? 学校の奴?」
「秘密です」
それを無理やり隠すか消すように弾んだ声色と笑顔で話しに花を咲かせる。しかし取り繕えるものではなく、
「何だよ、教えろよ」
するりと距離を縮める松岡の腕は立花の肩から背に回り、
「俺とお前の仲だろ?」
「えー……」
応えるように立花の手は松岡の腕に添えられる。
「なら、言いますけど――…‥」
不穏な色気。
「……それは目の前にいる貴様ですよ」
「奇遇だな、俺もだよ」
互いの獲物を手に距離を取り、アパートの庭へ踊り出る。先に火を噴いたのは立花のG3 SASだった。
「初めて会った時から目障りなのですよ、貴方」
相手を斬り裂く刃のような弾道が松岡に迫る。
「普段の大人びた仕草もサバゲーが絡むと子供っぽくなる表情も実はヘタレな所もそれでもすごく面倒見の良い所も」
刃に遅れて立花自身が突っ込んでくる。
「好きすぎて毎日毎日立花の脳内は貴方一色ですよ! どうしてくれるんですか!!」
玄関の扉を叩き割る威力の拳が松岡の目元を掠め、内出血の痕がその顔に残った。
「責任……、取って下さいよ……!」
職業柄、松岡の顔は商品そのものだ。傷つけられて仕事に支障が出るのは曲がりなりにも大人として許されることではない。しかし松岡が苛立った理由はそこではなかった。
「黙ってりゃ言いたい放題言いやがって……」
バックステップで距離を取り、2丁のデザートイーグルの銃口を立花に向け、迷いなく引き金を引く。
「俺がお前のまっすぐな視線とかまぶしすぎる笑顔にどれだけどれだけときめいたか知らないくせに」
弾が命中したほんの僅かな瞬間、一瞬の隙をついて立花に肉迫する。
「俺がお前に話しかけるのにどれだけ緊張したか知らないくせに、ふざけんな!!」
愛銃で殴り掛かるという松岡の暴挙に、立花もまた愛銃の銃身でそらせて応戦するが、同時に放たれた弾が立花の頬に傷をつけた。
「は……、冗談を言わないで下さいよ、貴方みたいな友人にも恋人にも苦労しないだろう人が!? 清純を気取るなこのホスト!!」
「何だよ、お前だってそうだろ!?」
互いの主張を、想いの丈を弾丸に込めた戦闘は、言葉が本心に近付く程に白熱していく。
「今はチームメイトでもすぐに誰かのモノになるんだろ!? 俺の知らない所で俺の知らない奴といいことするんだろ!?」
「そして立花の知らない顔で立花の知らない誰かを3人目にして戦うのでしょう!? 反吐が出る!!」
「お前なんか……!」
「貴方なんか……!」
「俺の「立花のモノにならないなら殺してやる!!」」
「「えっ……」」
重なる言葉にぴたりと銃声が止む。しかし今までの戦闘がなかったことになる筈もなく、
「二人とも何やって……、何この図?」
破壊の爪痕が生々しいサバゲ―フィールドもどきの中で照れ合う2人というシュールにも程がある画に帰宅した雪村がひたすら戸惑うことになった。
作品名:松蛍でラ/ブデ/ス。パロ 作家名:NiLi