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Do not go

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池袋のとある薄暗い路地裏から罵声と何かを殴りつける音が聞こえる。
『痛いなぁ、早く飽きてくれ無いかなぁ。
 っていうか、静ちゃんにこんな所見られたくないなぁ』
地に這い蹲り、見知らぬ男達に蹴り飛ばされながら、折原臨也はぼんやりとそんなことを考えていた。
あたり一面には夥しい赤黒く変色した血と錆のような匂い。
そして、臨也とは別に地に這い蹲り、低い唸り声と血を流す二人の男。
臨也自身は、何かで殴られた衝撃で頭から血が流れ、口の中も切れているようで血の味がする。
骨が折れている感覚は無いが、あちこちは痛い。
それでも臨也は罵声を言いながら蹴り続ける男達に不敵に笑った。

事の起りは、数分前。
仕事帰りに出くわしたこの男達は、臨也に貶められた男達。
臨也が不味いと思ったその瞬間、ポケットにいつも入れているナイフで応戦したが、人数の多さで臨也がいくら戦いなれてるとはいえ、敵うはずが無い。
それからずっと彼はこの男達に殴られ、蹴られている。
そんな状況でも、大半の男達に痛手を負わせているのだから、臨也が弱いというわけでもないのだが。

『やばいな、痛みで意識がなくなってきた。』
蹴られながらほんの小さなうめき声しか上げず、男達の攻撃から身体を丸め耐えながらそう思う。
頭上からは何を言っているのか分からないくらいの罵声が飛び交う。
ふと、臨也がその目線をあげると、一人の男の手にナイフが見えた。
『不味い、このままだと刺されるな。』
焦ってもいい状況で、いたって冷静にそう判断しながら、ナイフを持つ男を睨みつける。
そのナイフを持った男は不敵に笑い、臨也に向かってそのナイフを振り下ろしたその刹那、その男の真横を何かが横切り、その男の近くにいた数人の男にぶつかる。
その男達のうめき声と共に、がらんという音を鳴らしながら地に落ちたソレは、道路際にある標識だった。
「あ゛あ゛?
 てめぇら、何してやがる。
 つーか、臨也、てめぇ無様だなぁ。
 何、這い蹲ってやがんだよ。」
標識らしきものを片手で担いだまま仁王立ちの男が笑いながら、臨也を見下ろす。
「静ちゃん、何でここに?
 てか、油断しただけだよ。
 それよりも、何余計なことしてるの?
 これ、俺の問題なんだけど?」
この人数の男達に立ち向かっていく体力などとうに無いくせに臨也は平和島静雄に向かって笑いながらそう言い放つ。
「うるせぇなぁ。
 臨也、てめぇを殺すのは俺なんだよ。
 他の奴らに殺されそうなってんじゃねぇ。
 てめぇらも、人の獲物に手だしてんじゃねぇよ、あ゛あ゛?」
そう言いながら、静雄は標識を振り回しながら臨也を蹴り飛ばしていた男達ににやりと笑いながら立ち向かっていく。

一人、また一人と静雄の振り回す標識に弾き飛ばされ、その衝撃でビルの壁や地にその身体を打ちつけ、立ち上がれなくなっていく。
最後の一人を殴り倒すと、静雄は立ち止まる。
薄暗い足元に差し込んでいる光に少し反射された地は、赤黒い水溜りをつくり、あちこちに飛んでいるのが見えた。
辺りを見回すと、静雄に殴り飛ばされた男達のほかに、血を流した男達が見えた。
『・・・臨也がやったのか。』
そうポツリと心の中で呟く。
そして、踵を返すと、這い蹲っているはずの臨也のほうを向いた。
ちょうどそのとき、自力で立ち上がろうとしている臨也が見えた。
完璧に立ち上がれるわけもなく、壁に手をつきながら、やっとの思いで立ち上がれる程度だった。
「・・・何?
 ほんと無様だよね。
 そもそも助けてなんて言った覚えないんだけど。」
壁に手をついて、崩れ落ちそうな身体を必死に支えながら、笑いながら臨也は静雄にそう言い放つ。
静雄はそれに何も答えず、臨也の目の前に立ち、自分のYシャツの袖で臨也の頬に付いていた血を拭う。
ソレは突然起こった出来事。
臨也は今までそんなことを彼からされた事が無いためか、一瞬思考が停止した。
そんな臨也を知ってかしらずか、静雄はそのまま臨也を抱きかかえる。
「は?
 ちょ、静ちゃん、何してんの?
 下ろせよ。
 馬鹿じゃないの?」
臨也は抱きかかえられたことに少しパニックになり、もがきながらそう言う。
「るっせぇな。
 怪我人はちったぁ、だまってろ。」
意無を言わさず静雄はそのまま同じ池袋内にある、岸谷新羅の家に向かった。


−−−ピンポーン
新羅の家の前に着いた静雄は呼び鈴を鳴らす。
抱き上げられている臨也は、暴れる体力も無いのかおとなしくしていた。
「はーいって・・・静雄?
 って、それは臨也かな?」
呼び鈴に呼ばれ、ドアを開けた新羅は訝しげにそう静雄に聞きながら中に入るように促す。
「路地裏で、無様にボコボコにされてるの拾ってきたんだ。
 俺以外の奴に殺されるのなんざ、見たかねぇから、手当てしてやってくれ。」
そういいながら、静雄は部屋に足を進めた。

「あ、あの部屋に寝かせておいてくれるかい?
 今、手当てする道具持ってくるから。」
新羅はそう言い残すと、別の部屋へと消えていった。
残された静雄は、ドアを開け、質素なつくりのベッドとサイドテーブルしかないその部屋に入ると、臨也をそっとベッドに下ろす。
当の本人の臨也は、痛みが酷かったのか、気絶に近い形で眠っていた。
静雄もそのベッドに腰を下ろす。
そして、苦悶の表情の臨也の頬にそっと触れると、臨也の表情が和らぐ。
「あんな所でやられてんじゃねぇよ、ばぁか。
 ノミ蟲の癖に、変なことしてやがるからだろぉがよ。
 コレに懲りたら、少しはおとなしくしてることだな。」
聞いていないし、聞こえていないのは分かっているが、静雄は臨也の頬を撫でながらそう呟く。
そして、頬を撫でながら、片方のYシャツの袖で額に付いた血を拭い、その額に口付ける。
そのまま眼下の臨也を見てふと笑うと、静雄は臨也の唇にそっと口付ける。
軽い口付けの後、優しく臨也の頭を撫で、立ち上がる。
「てめぇを傷つけていいのは俺だけだからな。
 俺が殺すまで、死ぬんじゃねぇぞ、臨也。」
そう言うと、踵を返し、部屋を出る。
パタリというドアが閉まる音と共に、臨也の眼が開けられた。
遠く、ドアの向こうで新羅と静雄の声が聞こえる。
どうやら、静雄が帰る話をしているらしい。

「静ちゃんの癖に・・・、ずるいよ。
 全部丸聞こえだって。」
そう呟いて、ごろりと横を向く。
そしてそのまま身体を丸める。

静雄の声が
体温が
優しく触れた唇が臨也の心を満たしていく。
静雄が部屋を出るとき、行かないでと言えばよかったのか。
何時ものやり取りからは想像できない、静雄の優しさに臨也は混乱していた。
「静ちゃんの馬鹿。
 静ちゃんのせいで息がうまくできないよ。
 ・・・手を伸ばしても届かないって分かってるから、喧嘩してたはず、なのになぁ。」
ベッドの上で蹲り、混乱をどうにか解こうと必死になっていた。
「愛してるよ、静ちゃん。
 殺したいほどに。」
そう臨也はポツリと呟いて意識を失うかのように眠りについた。

作品名:Do not go 作家名:狐崎 樹音