運気上昇?
ペットの写真でつづる歌とか短いながらも楽しめる歌とかを、昼休みの休憩室で秘書課のメンバーと見るのだ。
私が一緒に見たいという姿勢を示すと、ナナイが「部下の憩いのひと時を邪魔しないで頂きたく思います」と慇懃無礼にことわりを入れてきた。
おかげで5分間とは言え、アムロと私は離れ離れにされてしまうのだ。
それを面白くなく思っていたところ
「今週の僕たちは、謝ると吉みたいだ」といきなり告げてきた。
「謝る? 誰にだね」
「誰でも良いみたい」
「それは誰からの指図なのかな」
「『おみくじ』ってのがランダムに映し出されてね。それを任意の時にカメラで撮るんだ。で、その時に撮れた物が今週の運勢につながるって言ってた」
「オミクジ・・・。確か、君の血脈につながるジャパンの風習だったように記憶しているが」
「博識だねぇ〜、シャアは」
「で? 誰に君は謝るつもりかな」
「ん〜〜。やっぱり、カミーユ?」
「カミーユ?! 何故だ?」
「シャアってば。僕が知らないとでも思ってるの?」
「・・・何をだね?」
「あなたが毎年、カミーユの誕生日にかこつけて意地悪っぽい事してるの」
「あっ。あれは、意地悪ではなく」
「カミーユが、僕相手だと怒れないのをいい事に色々と悪さしてるでしょ? 鉄下駄贈ったり、料理が出来ないであろう鮭を贈ったり」
「・・・・・・」
「僕だって最初は気が付いてなかったけどね。だから今年のカミーユの誕生日は、僕が美味しいって思ったチョコ菓子贈っといたから」
「チョコ・・・菓子?」
「うん。ナナイさんとギュネイに教えてもらって、食べたら美味しかったんだ〜」
「私は貰って無い!!」
「貴方には合わないでしょ? 駄菓子程度の値段なんだから」
「値段など関係ない君から貰える事に意味があるんだぁ! あんの、修正小僧めぇ〜!!」
ギリギリと歯噛みする顔に、総帥職としての威厳などあったものではない。
(こんなとこ、部下達に見られたら、評判が下がっちゃうよ)
アムロは心の中で頭を抱えた。
「いい? カミーユから通信が入ったら、昨年までの色々をしっかりと謝るんだよ?!」
「・・・・・・」
「そうれば、運気が上がって良い事がきっと起こるんだから」
ビシッとアムロから念押しされたら、否やを告げられないシャアだった。
シャアが、贈られたチョコ菓子をみんなで分けて美味しく食べていると嬉しそうに通信してきたカミーユに渋々といった態で謝罪を入れると、天変地異の前触れか!!と慌てて通信を切られ、臍を曲げたのは言うまでもなく
そして、その口直しを兼ね、『良い事があるのだろう?』 とアムロを一晩中貪ったのは、必然といえば必然な出来事だった。
「私にとっては、君がいてくれる事。それだけで運気は天井知らずに上がっているのだがね」
翌日、実に晴れ晴れと艶々した表情で告げられ、ベッドの住人と化したアムロは(これからは別々の籤を引く事にしよう)と心に強く誓ったのだった。
2015.11.11