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無表情でのんきだけど誰よりも優しい君へ

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気を遣われてしまったのか、ヤマトとタケルプラスパートナーの四人は光子郎とモチモンを残して見張りに出てしまった。
エネルギーを使いすぎたから、自分が抱いて添寝をしてあげようとしたが、モチモンはすでに眠ってしまっていた。
休憩をとる前はヤマト達がいる手前、さらにツノモンにちょっかいを出されたこともあってか自分で歩くと言い張って光子郎の腕に抱かれることを拒否し続けた。
普段のテントモンは無表情で感情が読み取りにくい(光子郎には大体わかる)が、幼年期のモチモンは反対に表情豊かでかわいらしい仕草をする。
だっこを断る時の恥ずかしがっているのに加えた怒った顔とか、今目の前にしている安らかな寝顔とか、以前は感じなかった愛おしさがこみ上げてくる。
相手が愛らしいモチモンだからだと光子郎は思わなかった。

「どうして…、僕、君の存在に気付いてやれなかったんだろ?

随分前の出来事。
光子郎より先に寝付いたはずなのに次の日の朝目覚めると、自分のすぐそばで光子郎の寝顔を覗き込むように眠っていたテントモンがいた。
そこでは何とも思わなかった、いきなりテントモンの顔があってびっくりしたぐらい。
でも今考えると、全く違う。

「心配してくれてたんだよね、あの時も…。

ぎゅっと、シャツの胸元を握り締めた。

光子郎は、人付き合いが大の苦手だがその分常に緊張していた。
太一がいなくなってから約二ヶ月経ち、テントモンと二人きりになった。
それまでは六人という光子郎にとっては大人数の中にいたおかげであまり気にすることがなかった。
とある光子郎を苦しめるもの…考えるだけで胸がきつくなって、吐き気がする…、人間関係を保とうと努力している間は顔を出さない。
それが一人になったことで光子郎を蝕みはじめた。
昼間は大丈夫、でも夜、眠りについてから。
幼い光子郎の網膜に刻まれた、残酷な現実…。
その夢を見るようになった。
幾度となく別のことを考えようと思うのに容赦ない記憶。
長い間一人が続いて、それはどんどん隙をついて光子郎の精神に纏わりついていった。
でもそんな時、

「光子郎はぁん、ハラ減りまへんかぁ~?

穏やかな彼の声、おどけているけどそれが心地良い。
自分が苦しんでいる姿を彼に見られたくなくて、

「いえ、大丈夫ですよ。

笑顔を作って彼に向ける。
辛い姿を人に見せないようにするのは慣れている。
同情されて関わり合いたくないから。
でも、テントモンにはそういったことを考えて見せた表情ではない。

心配をかけたくない―――。

二人きりになって、ただでさえ食事に気を遣ってもらっているのにそれ以上迷惑をかけたくなかったからだ。
デジモンの世界に来てから自分はだいぶ穏やかになったと自覚している。
繕う笑顔が段々自然に浮かべられるようになった。
パートナー故にどうやらテントモンにはその『笑顔』が、作られた物だと気付いているらしかった。
それに気付いたのも、自分がテントモンのパートナーであるから。
辛いのを笑って誤魔化して、心配をかけまいとして、知らず知らずテントモンを自らの存在から遮断していた。
でも切り離せなかった、彼は僕のパートナーなのだから。

光子郎はごしごしと目元をこする。
辛い夢を見てうなされる自分の横で、心配そうに見下ろすテントモンの姿が目に浮かぶ。
今とは全く逆の状況。
安堵して眠るモチモンが、どうしようもなく愛おしい。
ぽろぽろと零れる涙をもう拭わない。

「君は…、ずっとこんな風に…僕を…、見守ってくれていたんですね…。

腕の中には、退化した直後に抱きしめたパートナーの温もりが今も残っている。