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はろ☆どき
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novelistID. 27279
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境界線と聖なる夜空

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砂漠のように砂しかない乾いた地面に座り込み、エドワードはぼんやりと地平線を眺めていた。今は真夜中近くで、黒々とした大地と夜空の境界は殆ど分からない。
しばらくすると、男がやってきて無言で後ろに座り込んだ。振り向かなくても誰かは気配でわかる。だから振り向かない。
男は両足でエドワードの身体を挟み込むようにして被さってきた。
「――おい、なんだよこの体勢は」
エドワードが文句を言うと、男はさらに両腕を身体の前に回して抱え込んできた。喧嘩を売っているんだろうか。
「暖を取ってるんだ」
しかし男――自分の上官であるロイ・マスタングはしれっとした調子で返してくる。
故意なのか無意識なのか、低めだが無駄に通りのよい響く声で後ろから耳元に囁いてくるものだから、された方は堪らない。
顔も心臓も近過ぎる。勘弁してくれ。
「オレを湯たんぽ代わりにするなよ」
努めて邪険にそう言ったものの、確かにここは寒い。だからといって火を焚くわけにもいかなかったので、エドワードも黙ってされるがままにした。
ここは真冬の国境沿いで、今は隣国からの夜襲を警戒しながらの野営中なのだ。
部隊の司令官が陣営から外れて、警護も付けずにふらふらしているのがばれるのも不味いだろう。この格好も。
「真冬の夜空は澄んでいて綺麗だな。街中でも戦地でもそれは変わらない」
いつの間にか、ロイは夜空を見上げているようだった。
言葉につられて、エドワードも目線を上にやる。よく晴れていて、無数の星が瞬いているのが見えた。
「君が好きだよ」
「なっ……!」
不意打ちだった。脈絡がなさ過ぎる。
エドワードは即座に振り向こうとしたが、ロイが空を見上げたまま顎をエドワードの頭のてっぺんに乗せてしまったので身動きが取れなくなった。そうでなければ、振り向きざまに殴っていたところだ。
「オレの頭を顎置きにするな! てか、こんな時にいきなり何言ってんのあんた……!」
「こんな時だからこそだよ、鋼の。――君にこんな景色を見せたくはなかった」
そう言うと、ロイは見上げていた顔を伏せ、今度はエドワードの肩に額をつけて蹲るようにして黙り込んでしまった。
不意打ちにもほどがある! と怒鳴るかのように打っていた心臓が、その言葉に今度は違う意味で早く脈打つ。
いつもは不遜で大きく見える大人が、なんだか怯えている小さな子供のように思えて――抱き締め返して背中をさすってやりたい気持ちになった。
今もすっぽりと包まれているのは、自分の方だったけれど。
しかし身じろげないまま、仕方なくエドワードは可能な範囲でロイの頭のある方に自分の頭を傾け、澄んだ夜空を見上げたまま言った。
「あの星はさ――」
星がきらきらとよく見えた。
「ここにいる皆のことを、家で待ってる人達にも見えてるんだろ?」
ロイの言うようにアメストリス国内でなら、いや隣国でも恐らく、誰の目にも等しく同じように見えるはずだ。
例え角度は違っても、きっと同じ星空が。
「でも、早く一緒に見られるようにしてやんねーとな」
こんな境界線もわからないような場所で、見知らぬ相手と命のやり取りをするのなど止めて、早いところ平和的に切り上げてしまおう。そして、皆で早くうちに帰って家族と夜空を見上げよう。できれば暖かいところから。
「あんた、和平交渉とかそういうの得意だろ?」
オレはあんたと一緒なら何処ででもいいけど。
そう呟いたエドワードの言葉は、空から降ってきた漆黒の二つの宙と唇に遮られ、二人の間で熱い吐息となって溶け込んだ。
fin
作品名:境界線と聖なる夜空 作家名:はろ☆どき