真冬に触れ合うもの
果てしなく続く雪原に僕はぼんやりと雪原に倒れるようにして眠る彼を眺めていた。
彼の体は雪が触れる部分だけほんのりと青味を帯びているものの、それ以外はすっかりと雪原にまぎれるような白さだった。雪は降ることもなく、ただ晴れ渡った空の青さが目に痛かった。風の音も、匂いもしなかった。僕はぼんやりと彼を眺めては、かすかにする呼吸の音に聞き入っていた。彼は生きていた。眠っているのだ。静かに、ひとりで。僕ひとりをこの雪原に残して。どんな夢を見ているんだい、ねえ、どんなところ、ねえ、そこはここよりもいいところ、ねえ、ねえ、と僕は訊ねても、雪原には響くこともなく、静かに飲み込まれるようにして僕の言葉は消え失せた。彼の呼吸をする音だけが耳をすませると静かに聞こえた。ああ、これはどうしたものか、そう口にしてしまえば後は簡単なことであった。今、僕は間違えなく孤独であると同時に、幸福であるということを理解してしまったのだ。
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20100425 真冬に触れ合うもの