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はろ☆どき
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Bread & Mustard【HARU21新刊】

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※小話より一部抜粋


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 いつだったか、オレは東方司令部近くの公園のベンチに凭れて、ぼんやりと空を仰ぎ見ていた。
 上空には小さいもこもこした雲がゆったりと浮いている。あれは羊雲だ。空だけ見てれば、リゼンブールとあんまり変わらない光景だなあ。
 そんなことを考えながら目で雲を追っていたら、身体が仰け反ってベンチの背に乗り上げるようになっていた。その時、ふいと目の前が暗くなった。顔の上に何かカサカサする温かいものが乗せられたのだ。
「ふえっ?」
 驚いて体勢を崩しそうになった。すると顔の上にあったものがどけられたので、すかさず上半身を起こして事なきを得る。 ほっと息をついて振り向くと、そこには両手に紙袋を持った大佐が立っていた。
 大佐は片方の紙袋を持ち上げて見せると、胡散臭い笑いを浮かべながら「やあ、鋼の」と声をかけてきた。
「……なんだよ」
 オレはふいをつかれた不機嫌さのままに、ぶっきらぼうに返した。
「君、昼飯まだだろう? 私もこれからなんだ。奢ってやるから付き合いたまえよ」
 オレの態度を気にした風もなく、大佐は隣に座り込むと片方の紙袋を押し付けてきた。
「ホットドッグだ。そこで買ってきた。作りたてだから冷めないうちに食べたまえ」
 そう言って、さっさと自分の紙袋を開け始める。パンとソーセージのいい匂いがした。
 オレは午前中図書館にいたけど、昼飯を買いに外に出てきたところだった。何を食べるか決めかねて、とりあえず公園で座っていたのだ。腹は減っているし、目の前にホットドッグがあるならば食べないのは作った人に失礼だろう。買ってきた奴が誰かはともかくとして。
 そう考え、自分も渡された紙袋を開けようとした。
「おっと、待った。間違えた。君の分はこちらだ」
 大佐はそう言ってオレの持っていた紙袋を摘み上げると、代わりにもう一方の紙袋をオレの手の上に乗せた。
「なんだよ、なんか種類でも違うのかよ」
 違うものならば、それはそれで気になるじゃないか。
「種類は同じなんだがね。こっちはマスタードをたっぷり付けてしまったから……。鋼のがマスタードを好きか分からなかったので、ソース類は別添えにしてもらったんだ。ケチャップとマスタードは小さい容器に入っているよ」
 渡された紙袋を今度こそ開けてみると、確かにパンにはみ出すように乗せられたソーセージには何もかかっていなかった。そして小さい容器が二つと、飲み物らしき蓋付のカップが一つ入っている。
「それにそちらの飲み物はカフェオレだ。こっちのはブラックコーヒー」
「へーへー、どうせオレの味覚はお子様仕様ですよ」
「君の年頃ならばそんなものだろう。それにカフェインも香辛料も過度に摂取するのはよくないからな。成長の妨げの一因になるぞ」
 大佐はにやにやしながら言った。気に食わなかったが言い返しても揶揄われるだけだと思い、無視を決め込んでホットドッグに向かうことにする。
まず、ケチャップの容器を開けて中身を全部ソーセージの上に乗せた。けっこうたっぷりあった。美味そうだ。
 それからもう一つの容器を取り出して、どうしようかとしばし考える。
「やはりマスタードは苦手かね?」
 オレの様子を見ていた大佐が尋ねてきた。

【ホットドッグ】より


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「寝不足と栄養失調でダウンした国家錬金術師が寝ているというのはここかね?」
 入口の方から聞き覚えのある、今はとても聞きたくない男の声がした。
 狸寝入りを決め込むつもりだったけれど、相手はこちらの場所をしっかり把握していたらしい。真っ直ぐに近づいてくる足音がしたかと思うと、白いカーテンがさっと引かれ、現れたのは思ったとおり大佐だった。
「……よう……」
 オレはせめてもと、思いっきり半目で睨み上げてやった。しかしどうやら効果はなかったらしい。
「おやおや、いつになく迫力がないな」
 大佐はわざとらしく片眉を吊り上げながら、嫌みったらしく言った。
「私の管轄内で行き倒れるのは勘弁して欲しいのだがね。監督不行き届きのレッテルを貼られてしまうじゃないか」
「いつも放任してるくせによくゆーよ。あんたの管轄じゃなくてもオレの動向がすぐあんたんとこに連絡行くの、こっちこそ勘弁して欲しいんですけど」
「連絡されるようなことを仕出かさないでくれれば、私も安心して過ごせるのだがね。まったく、いくつ心臓があってももたないよ」
「そんなことくらでどうにかなるもんかよ、あんたの毛の生えた心臓は」
 いつの間にかいつものように嫌味の応酬をしていた。
「憎まれ口を叩く元気はあるようで安心したよ」
 呆れたように息をつくと、大佐は手にしていた紙袋をオレの枕元に置いた。
「……何これ」
 反射的に手で支えた掴んだそれはほんのりと温かい。食い物の匂いがする――と認識する前にくうと腹が鳴った。
「ひっくり返って起き上がれないほど腹を空かせた少年に、親切な大人が差し入れを持ってきてやったのだが……食べられそうかね?」
 そう言われて、オレは空腹のまま簡易ベッドに横になることを余儀なくされていたことを思い出した。

【スピナッチサンド】より


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その他、ちょこっと【BLTサンドウィッチ】もあります。