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帰る場所 肆

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<第四幕 誓の宴>



今夜は珍しく、神楽も沖田も宴会に参加しているようだ。それは近藤に強制参加を強いられたからだ。全員の注目を浴びているその男は改めて見るとこれまでにはない何かが感じられた。

「いよいよ明日が決戦の時だ。みんなそれぞれの想いがあると思うが、これだけは言わせてくれ、死ぬな!!何が何でも生還しろ!そしてまた屯所(ここ)に戻って、一夜漬けのどんちゃん騒ぎをしようじゃねぇか」

「「「「 おおおおぉぉぉーーーーーーーーーーー!!!!! 」」」」

アイツはみんなの意思を固めるのがうまいな、と銀時はつくづく思った。そして、近藤に最速され彼もまた何か言う羽目になる。ギロリと近藤を睨むが直ぐにしょうがないといった顔をする。

「・・・まぁあれだ。仲間を信じろ。こないだまでいがみ合ってた俺たちに信頼関係があるかは知らねぇが、このゴリラ助けに行った時もなんだかんだで切り抜けられた。今回は最低でも2人行動だ。1人じゃねぇ、本気で苦しくなったら隣にいるやつを頼れ。全部終わったらまた笑ってギャーギャー言いながら酒飲めりゃァいい」

一瞬熱くなった空気が凍りついたような感覚になるが、それがただ威勢が冷めてしまったではなく、全員がここにいる者たち全員を信じようとしていることに、1人1人の顔を見て銀時は頷いた。そして直ぐに銀時は沖田を連れて席を外した。もはやどんちゃん騒ぎだ、神楽もそれに混じっている、新八、近藤、土方は気になり銀時たちの居場所へ向かう。部屋を出て縁側を歩くが夜風の突き刺さるような冷たさに、ぶるっと身震いをした。銀時が話しだそうとしていたところに、新八たちが現れ、溜息を付きながらも口を開いた。

「総一朗くん「総悟でさぁ」・・・神楽と一緒だったよな?」

「そうですぜ?」

「あいつのこと頼む。今のアイツを守ってやってくれ」

沖田は銀時が何を言っているのか理解できなかった、なぜならあの少女は自分が守らなければいけないほど、弱くない。むしろ毎回喧嘩をしても引き分けるほどなのだ。守る必要などないはずだ。土方や近藤も同意だろう。新八だけは理解しているようだが・・・

「どういうことですかい?アイツは俺が守らんといけねーやつじゃねぇでしょう?」

「神楽が夜兎ってことはお前らも知ってんだろ?俺は直接見たわけじゃねが、アイツは仲間が瀕死の状態になったとき、暴走する。神楽じゃなく、ただの夜兎になっちまう。だから、そうなった時にアイツを呼び戻して欲しい」

驚いて言葉が出てこない3人に新八が呟く。

「神楽ちゃんは・・・普段の日常生活でも夜兎の血と戦い続けてます。誰も殺したくないって・・・だから神楽ちゃんの手を汚させる訳には行かないんです!」

新八は銀時の横へいき、2人で頭を下げる。


「「 頼む(お願いします)。神楽(ちゃん)を守ってくれ(ください)」」

必死なこの二人に、沖田は少し考えたけれど直ぐに

「わかりやした。そうなった時は守ってやりまさぁ」

土方も近藤も任せろと言わんばかりの表情をしていた。土方と近藤と新八は先に戻ることにした。銀時と2人きりになった。
ふと沖田は疑問にを持ったことを問いかけた。

「旦那。俺でいいんですかい?俺ぁあの娘とはかなり仲悪いんですがね・・・」

「だからこそさ、真選組の中で神楽が一番一緒にいることが多かったのはてめぇだろ?」

そう銀時に言われ、納得してしまった。確かに他のやつらにこの役目をされるとなんというか、腹立たしい。抹殺してやりたい、特に土方ならなおさらだ・・・と考え込み不機嫌な顔になる、知ってか知らずか銀時はてめぇ以外にゃ頼まねぇよ。とこぼした。

いつになく、騒いでいた者たちはいつの間にかいなくなっていて全員外に出て夜空を仰ぎ見ていた。満月が凛とした表情で浮かんでいる。またこの空を拝むために、江戸を守るために・・・


誰かが言った


『この空をまた此処に居る全員で見るために、必ず生き抜いて、守り抜いて、この場所に帰ってくる』


近藤の言葉、銀時の言葉、そしてその言葉が刻まれた。

時刻は11時前後、作戦結構は午前6時。それぞれの思いを胸に床につく。



第四幕 終  第五幕へ続く・・・

作品名:帰る場所 肆 作家名:季瀬