同調率99%の少女(7) - 鎮守府Aの物語
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生徒会室に戻った那美恵らは、書記の三戸と和子に、艦娘部の顧問が決まった旨、その顧問が四ツ原阿賀奈という先生であることを伝える。すると1年生である二人は顔を見合わせ、苦笑を顔に表しながら那美恵と三千花に告げた。
「あがっちゃn……じゃなくて四ツ原先生を押し付けられたんすか? はぁ……。」
三戸は素っ頓狂な声をあげて本気で驚いている。
「あの先生、悪い人ではないんでしょうし、普通に教え方うまいし頭良い人だと思うんですけど、ちょっと……。」
和子は静かに言うが、その言葉は語尾を濁している。
二人の言葉が要領を得ないのに思い切り気になった那美恵と三千花。顔を見合わせ、再び三戸たちの方を見て問い詰めることにした。
「わこちゃんわこちゃん。ちょっと…なぁに? 四ツ原先生ってどういう人なの?」
「あの、その。あの先生、何をするにも空回りというか、それでいて面倒見が良いから正直言いまして……」
その続きは三戸がハッキリ・ズバリ言い放つ。
「いらぬおせっかいなんっすよ。おれら男子生徒の間の評価じゃあ、四ツ原先生は童顔でかわいいし、おっp……ふくよかだし、天然入ってて結構ツボなんすけど、度がすぎる世話やきなところあるんすよねぇ。それでいて俺ら生徒の間の問題をとりなそうとしてよくわかんねぇ方向に持って行って結局失敗することもしばしばで。頭は良い人だっつうのはわかるけど、なんというか抜けてるっていうか」
那美恵と三千花は三戸の言いたいことがわかった。三千花がそれを言い当てる。
「つまり考えがちょっと足らない人なのね。必要以上に頑張っちゃう人、言葉悪くいえば無能な働き者ってところかしらね。」
「あぁそれそれ。そんなところっす。」
「副会長、そんなにぶっちゃけてそれさりげないどころか普通に失礼だと思いますけど……。」
珍しく言葉がきつい三千花のセリフを聞いて、和子はツッコむ。
那美恵は腕を組んでうーんと唸りながら感じたことを口に出した。
「頭良いというのは勉強ができるとか自分の得意分野でのことなんだろうねぇ。頭強い弱い・思考とは別のベクトルだろ〜し。」
三戸たちの話を聞いて、ますます、自分とは全然違うだわ〜と密かにツッコミを何もない宙に入れておいた。
「ヘタに動かれると厄介そうな人ね。なみえ大丈夫? 割りと苦手なタイプでしょ、自分のペースを乱されそうで。」
「う〜〜ん。そこはまぁ先生なんだし、うまく接するよ。ただ普通の部活と違って、顧問の先生も艦娘になる可能性が大だから、鎮守府内で変に動かれるとまずいかも。提督がなぁ〜、三戸くんたちみたいに四ツ原先生にメロメロになったりしないか心配。」
「え゛?」
三戸は何の脈絡もなく自分に振られて焦る。そんな様子の三戸を見て、那美恵は意地悪そうな表情で三戸に少し詰め寄ってさきほどの彼の語りの一部にツッコミを入れはじめた。
「さっき言いかけたのって、ここでしょ〜?」
那美恵は控えめな胸を張りながら自身の胸を指さして三戸に向かって言った。
「え!?あーその、いや〜アハハ……」
「男の子はやっぱここがええのんかぁ〜。ん?ん?」
男同士で下ネタ話をするのは気が楽なので楽しいが、気さくな人とはいえ生徒会長である女の子から言われると、三戸もどう反応すればいいか困ってしまう。
困りながら愛想笑いしてうやむやにしようと言葉を濁しながら彼が思ったのは、"違います!そんな小さいのじゃない"という、うっかり口にしてしまえば那美恵だけじゃなくその場にいる2人の女の子からも非難轟々にやりこめられること必至の大変失礼極まりないことだった。
「あーもうなみえ。せっかくわたしも毛内さんも突っ込まないようにしてたのに、なんであんたは余計なのに触れて脱線するのよ……。」
三千花は那美恵の悪い癖を親友として厳しく咎めた。那美恵はエヘヘと照れ笑いをしながら後頭部をポリポリと掻いたのち、気を取り直して言葉を続けた。
「まぁ。まだどうなるかわからないし、なんとかなるとは思う。どのみち今度提督がうちの学校に来て正式に提携の契約するときに顔合わせするはずだし、その時にあたしたちの知らない意外な事実が出てくるでしょ。お楽しみお楽しみ〜。」
やや心配される先生が顧問になったが、那美恵は楽観的に考えることにした。これでようやく足回りが揃った、本当のスタートだと。そして物と人は使いようだと、すでに接している提督と自分の関係性のように、きっとうまく影響を与えあって力になってもらえるかもしれないと考える。
なお那美恵が気をつけようとしているのは、その人のプライドなり、大事にしている部分は尊重しておだてつつ、うまく支えてあげることだ。
作品名:同調率99%の少女(7) - 鎮守府Aの物語 作家名:lumis