敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女
指揮通信車両
「どうやら変電所の中で何か動きがあったようです」
ひとりの士官がそう言った。〈指揮通信車両〉と呼ばれるクルマの車内だ。
変電所のほど近く、街の天井を支えている〈柱〉の陰に身を潜めて、何十という特殊車両が駐まり兵士が出入りしている。あるクルマでは反重力ドローンを何十機も無線で飛ばしてカメラで戦況を掴もうとしており、赤外線や集音マイクなどによっても敵のようすを探ろうとしている。それらの情報を集めて指令本部に送り、また、部隊に指示を出すのが指揮通信車両の役目だ。
「敵の動きに乱れが出てます。しばらく前に奥の方で爆発があって、続いて銃の発砲音も……これは内部で撃ち合いが起きているのだと思われます」
「それは」と、話を受けた上官が言った。「どういうことだ? 突入に成功した者がいるのか?」
「わかりません。敵の仲間割れということも考えれられます」
「どちらにしてもこちらにはチャンスということじゃないのか?」
「かもしれません。しかしことによると……」
作品名:敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女 作家名:島田信之