敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女
先取
「一機撃墜。こちらの損害はありません」
冥王星ガミラス基地でオペレーターが報告する。シュルツは満足の笑みを浮かべた。
「フフフフフ、それでいい。そうそうやつらの思い通りにさせてたまるか」
横でガンツが、「この調子で次から次に墜としてやれたらいいのですがね」
「まあそこまでうまくはいくまい。しかしやつらにしてみれば、〈反射衛星砲〉を見つけて攻撃せねばならんのだろう。一機一機と墜とされながらそれが果たしてできるものかだ」
「無理でしょうね」
「当然だ。できるわけがない。やつらは務めを放り出して身を護るしかないだろう。それがわたしの狙いだ」
言ってシュルツはまた笑った。ガンツもまた笑い返す。司令室内の誰もが皆、余裕を取り戻した顔で笑っていた。
「こいつらは今では母艦と通信を交わしているらしいな」
シュルツが言うと通信士が、
「そのようですね。この状況をすぐに〈ヤマト〉も知るでしょう」
「フフフフフ。それでいい」とシュルツはまた言った。「〈ヤマト〉め。貴様に貴様の鳥を救う手が打てるものなら見せてみろ――」
作品名:敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女 作家名:島田信之