敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女
船務科員達
〈ヤマト〉艦内をカーキ色の戦闘服を身に着けた船務科員が駆け回っていた。ビームの被弾区画に入り、負傷者を見つけ救助する。それには一刻の猶予もならない。戦闘服はわずかの間なら少々の穴が開いても中から塞ぎ、着る人間を真空中でも生かすように造られているが、それにはおのずと限度がある。十五から二十分がいいところであり、それを過ぎたら自分で動けぬ人間が助かることは有り得ないのだ。服に付いた緊急ボンベにそのぶんだけの酸素しか入っていないのだから。
〈ヤマト〉の外壁近くには、臙脂(えんじ)コードのクルーが主に配置されている。武器を操る砲雷科員に、姿勢制御スラスターを動かす機関科員。敵の攻撃を受けたとき真っ先に死傷するのがこの者達であるのは言うまでもない。
だが、〈ヤマト〉の本当の戦闘部員はむしろその後ろに控える黄色コードの者達だった。〈赤〉の危急にすぐさま飛び込み、命があるうち救け出し、損害を調べ報告して船の戦闘能力を維持するように務める。それが普段は生活部員の船務科クルーの役割であり、日々そのための訓練を欠かさずにきていたのだった。
『右舷E4区画に被弾! 十二班、救助に行けますか?』
『こちら第六班渡辺! A6区画応急処置完了した! 次の指示を求む!』
『B3区画被害甚大、応援を乞う!』
中枢である船務科室では、卓を囲むオペレーターが集まってくる情報を画面に表示させている。まるで芋を干すためにスライスして並べたような、一階二階と階層別に描き出された〈ヤマト〉の図。ビームの被弾を受けた区画に注意マークが記される。次から次にそれが数を増しつつあった。
作品名:敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女 作家名:島田信之