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confuse.

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以前、臨也に性行為を迫られたことがある。
「ねえドタチン、俺のお尻の穴にハメてみない?」
そう言われた瞬間、俺の体は氷になった。
コイツは往来で一体何を言い出すんだ。臨也のことだ、下らない思い付きでそんなことを急に誰かに言うとは思えない。いや逆に下らない思い付きである可能性も高いような気がするぞ、コイツの考えることなんて万に一つも分からない。どちらにしろ言えるのは俺には「断る」以外の選択肢がないことだ。ああでももし前者だとしたら、何か恐ろしいことに俺は巻き込まれているんじゃないか。
俺は十秒程突っ立って固まったまま、そんなことを頭のなかでぐるぐると考えていた。すると臨也が大袈裟に溜め息をつき、人を小馬鹿にしたようないつもの言い方で言った。
「まあそうだよねー。無理ならま、いいや」
心からほっとした。どうやら後者であったようだ。しかしそれも束の間、奴の次の一言で、俺はまた固まることになる。
「俺前々から、シズちゃん一回犯ってやりたいなーなーんて思っててさあ」
そうか被害者は静雄だったか。その発想はなかった。
「屈辱的じゃなきゃ意味無いからさ。気持ち良かったら駄目だと思って。シズちゃん喜ばすなんて吐き気がする」
コイツらはどうしてこうお互いを毛嫌いしているのだろう。臨也はともかく、静雄については、普通に付き合っていればまともなのだが。強い者同士は反発する。とは言え、彼らのそれは度が過ぎているように思う。同じ空間に居ただけで喧嘩(というにはかなりハイレベルだが)が始まる。最近は専ら池袋がその空間として利用されている。
「だから、それならまず俺が、ドタチンに試してもらおうかなー、なんて思ったワケ」
「それは全力で拒否させてくれ」
「わかりましたってー。えーと、他に当てはなかったかなー、と」
なにやら携帯を触り出した。まだやる気ではいるらしい。恐ろしい男だ。
「合わないなら何でそう突っ掛かるんだ。放っておけば良いだろう。」
「キライなんだよ。本当虫酸が走る。俺、人間そのものは好きなんだけどさあ」  
どの口が言うのだ。コイツは誰かを、人として愛したことがあるのだろうか。
「シズちゃんはダメ。心の底から大キライ。シズちゃんが嫌がることなら俺、なんだってしてやりたい」
ふと、何気無い最後の一言に何か含みがあるような気がして、しかしてその考えのあまりの信憑性の無さに、俺は自分を嘲笑った。いやだがしかし、人間が自己本位の下に動いていると仮定すれば、臨也を支配するその欲望は、ある種歪んだ愛とも言えるかもしれない。まあ、しょうもない話には違いないだろう。
「気持ち良かったら逆に悔しいんじゃないか静雄。お前もそうだろうが、あいつも相当お前のことが嫌いだぞ」
「……確かに。それもそうだね」
臨也が不敵な笑みを浮かべている。俺は自分の失態に気が付いたが、既に遅かった。スマン、静雄。俺は取り返しのつかない失言をしてしまったかも知れない。俺は心の中で、可哀想な友人に謝った。
作品名:confuse. 作家名:空耳