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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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 流留も驚いたが、それよりも一番驚いたのは那美恵だった。今まで数回艤装と同調してきたが、こんなことは初めてだった。最初は神通の艤装と同調していたつもりなのに、急に那珂や川内のときに見た記録の情景が頭に浮かんできた。ごちゃ混ぜになったその直後に激しい頭痛がした。普通の同調の仕方ではない、そう感じるのは容易かった。
 しかしこのまま一回で終わらせる気など那美恵には毛頭ない。

「会長、大丈夫ですか?」
 心配そうに流留が那美恵に近寄る。肩には触れようとしない。

「内田さんこそ、今さっき思い切り吹き飛ばしちゃってゴメン。」
「いいですって。それよりもさっきのとんでもない力って……?」
「艦娘はね、同調が成功すると身体能力が著しく向上するの。それを人体に負担がかからないように適切に制御してくれるのが、他に装備する艤装の部品なんだって、明石さんが言っていたの。ただ、今はコアユニットしかない状態だったから、多分きっとパワーアップした力が直接発揮されちゃったのかもね。あたしとしたことが、一度はちゃんと教えてもらっていたのに、そのことすっかり忘れて危ない状態で試してたよ……。」

「艦娘って、想像してたより危ないんですね。」
「まぁ普段はこんな陸上のどまんなかで艦娘になることないから、今回は例外だと思うよ。ふぅ…さて、もう一度試しますか。」

 那美恵の何気ない一言に流留は驚いて聞き返した。
「えぇ!? また試すんですか!? たった今危ない思いしたばかりでしょ!?」
「だから試すんだよ〜。たまたまかもしれないし。それにこんな大事な経験、1回で終わらせるわけにはね〜。ということで電源オン、お願いね?」

 那美恵の決意は固かった。しかし流留は心配してそれを止めようとする。
「いや……やめときましょーよ。あたしまたふっとばされるの嫌ですよ。」
「内田さんはあたしに近寄らなきゃいいんだよ。さ、お願いお願い。」

 流留は渋りつつも仕方ないなと思い、タブレットを手に取り準備をする。那美恵からは1m以上離れている。
「じゃ、電源つけますよー。……はい。」


ドクン


 那美恵はまた腰のあたりから痺れる感覚が伝わるのを感じた。再びきしむ全身のありとあらゆる関節。すぐに収まるのも先程と同じ。そしてここから。軍艦神通の記録の情景が再び頭に浮かんでは消え、那美恵の表情を歪ませる。
 しかし今度は、余計な情景が混じらずに収まった。
 2度めにして、ようやく那美恵は正常な状態で、軽巡洋艦艦娘、神通になった。
「えーっと。同調率?ってやつは、93.11%。これ、高いんですか?あたしの川内よりは高いんだと思いますけど。」
「ふぅ……。あたしが川内の艤装試した時は、91.25%だったから、川内よりかは高いね。那珂の98%よりは低いけど。」
「はぁ。」
「ともあれ、93%もあるんだから、あたし普通に神通にも合格ってことかな。……内田さんも試してみる?」
「えー、うー。はい。」
 言い淀んではみたが、実のところ他の艦娘用の艤装に興味があった。流留も神通の艤装との同調を試したところ、彼女の数値は42.09%と、不合格まっただ中のレベルであった。
「いいも〜んだ。あたしには川内の艤装があるんだから。」
 残念そうな表情をしながら、流留はぼそっとつぶやいた。


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 那美恵も流留も艤装のコアユニットを外し、椅子に座ってタブレットのアプリの画面を眺めながら話す。
「あたしが神通の艤装との同調に合格できたから、これで神通もあたしのもの。だから、神通の艤装を外に持ち出せるようになりました。これで展示を続けるのにも困らなくなったわけだ。ウンウン。」
 那美恵は腕を組みながら連続で頷いた。その様子を見て流留が尋ねる。

「じゃあこれからは神通の艤装との同調に合う人を探すってことですよね?川内はこれから返しに行くんってことでいいんですか?」
「うん。そーだね。ただ今日はさっきのあたしのことも気になるから、鎮守府には2つとも一旦持ち帰って、明石さんに調べてもらおうと思うの。だから今日は艦娘の展示は艤装なしでやってもらう。」
「なるほどー。」
「それじゃ内田さん。帰り支度して。みっちゃんのところに寄ってこのこと伝えたら、そのままあたしたちは鎮守府に行くよ。直行直帰ってやつ〜」
「直行直帰ってなんかOLみたいですね〜。」

 アハハと笑いあいながら、那美恵たちは生徒会室を出て視聴覚室へと向かった。
 視聴覚室では、2〜3人の見学者が今まさに見学している最中だ。
「あ、なみえに内田さん。同調のほうはどうだった?」
 パネルの解説は和子に任せて、三千花は那美恵と流留に近寄って尋ねた。

「うんあのね。内田さんは問題なく合格。んで、あたしも神通の艤装に、93.11%で合格〜!これで神通もあたしのものだよ〜」
「へぇ〜よかったじゃないの。これであなた、川内型の艤装すべてに同調できたってことね。すごいわあんた。」
「エヘヘ〜!もっと褒めて褒めて〜!」
 腰を曲げて姿勢を低くし、頭をなでてもらう体勢のままズリズリと三千花に近寄る那美恵。正直気持ち悪い動きだったので三千花は彼女の頭を撫でずに軽く叩くだけにとどめておいた。

 那美恵はあえて、最初に神通を試した時の異常のことは言わなかった。流留はそれに気づき、那美恵になんで言わないのかと小声で尋ねた。すると那美恵は流留の手をひっぱって部屋の端に言って自身の口に指を当てて内緒ということの理由を伝えた。
「みっちゃんに余計な心配かけさせたくないの。だから、さっきのことは、コレ、でね。お願いね?」
「えー、友達なら言えばいいのに。まーいいですけど。はい。秘密ですね。はい。」

 三千花の側に再び近寄る那美恵。三千花は那美恵にこの日の展示はどうするのか確認した。那美恵はそれに軽快に答える。
「うん。あたしと内田さんはこれから鎮守府に行ってそのまま帰るから、みっちゃんたちは展示の方、後片付けまでおねがいできるかな?」
「えぇ、いいわ。それで、神通の艤装はどうするの?」
「それなんだけどね、一応合格したってことを実物見せながら報告したいから、今日は川内の艤装と一緒に持って行くね。展示でまた試してもらうのは明日からってことで。もし同調試したいって子が来たら伝えておいて。」
「了解。」

 三千花は特に疑問を抱かずに那美恵の案に同意した。不安要素を一切伝えられていないので当然なのだが、那美恵のポーカーフェイスと、口ぶりのうまさで、さすがの三千花も那美恵の神通の時の異変を察することはできなかった。そのため疑問を一切抱かず、展示の案内に戻っていった。
 那美恵と流留はカバンを持ち直して視聴覚室の出入口へと歩いていき、残る三千花たちに挨拶をしてその日は別れた。
「じゃ、お疲れ様〜。またあしたね。」
「お先に失礼しまーす。三戸くん、展示がんばりなよ〜」

 三戸にだけは名指しで言葉をかける流留であった。