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悦びの呪(まじな)い

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 頭が重い。瞼をひらいても視界がぼやける。ここはどこだろうか。ずいぶん長
い間、意識がなかったに違いない。
「……ああ」
 未だ全身に残る痺れのせいで、思い出した。
「皇、帝」
 そうだ。そうだった。俺は皇帝の、罠に。
 押し寄せるイミテーションの大軍、呑まれゆく仲間たち、尽きる矢、光る魔法
陣、遠のく意識に残る言葉―――『堕ちろ、永久の支配と悦びの下に』。









「目覚めたか」
 姿を認めるより前に身体じゅうを緊張が駆け巡る。支配欲をはらんだ妖しげな
声色。この世界へ来て再び対峙するまでは、耳にする事も無いと思っていた。
 顔を上げると、同じくして鉄格子の扉が錆び付いた音を立てる。
「こうて……っ」
 目前まで来たかと思えば何かが口に入りこんできた。酷く冷たい。息ができな
い。
「牢に繋がれる心地はどうかね。枷によって縫い留められ一切の自由を奪われる
。私からして見ると今の貴様は……そうだな、さしずめ蜘蛛の巣に絡め捕られた
羽虫のようだ」
 ようやく抜き取られたそれは皇帝の、指、らしい。
「な、にを」
「名で呼べ」
 戻りつつあった視界がまた霧に包まれ始めた。おかしい、何かおかしい。頭も
重くなってくる。
 顎を掴まれ、無理矢理に顔を上げさせられる。苦しい。
「パラメキア皇帝たる私が命じているのだ……呼べ」
 息ができない。
「誰が、お前、の…!」
「ほう…成る程、反乱などと称して無駄な足掻きを繰り返す虫けら共はこの名を
知る筈も無いな」
 息ができない。喉の奥が冷たい、酷く冷たい、冷たさに焼けてしまいそうだ。
「マティウス」
 耳元でささやかれる。それすらも冷たい。それが冷たい。
「私の名だ」
「      」
「そうだ、それでいい」
 遂にくちびるも焼かれる、冷たさで、そこから流れ込む薔薇のように甘美な気
配で。マティウスはこれを褒美だ、と言った。



「万物の支配者である私の名を口に出来る。……至上の悦びだと思わんかね?」







 ああ堕ちた、堕ちた、のばらの花弁が堕ちていった





作品名:悦びの呪(まじな)い 作家名:みしま