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スパコミ新刊サンプル【ようこそ先輩】

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エドは自分の部屋へと歩いていた。無難にアメリカ・アカデミアの生徒としての責任を果たし、ジュニア時代の雪辱も晴らせたので、久々に上機嫌だ。思わず歌い出したくなる程浮かれている自分に自分で苦笑して、与えられた部屋のドアを開ける。一人には十分すぎる程の広さに行き届いた調度品は、質素ながらプロであるエドに対する敬意が表れていて、それにも彼は非常に気分を良くした。
 荷物を部屋の片隅に置くと、ベッドに腰掛ける。深く息を吸い込むと、自然の香りが肺いっぱいに広がった気がする。部屋の中なのに自然を感じるとは浮かれ過ぎだと、気を落ちつける為に洗面台へ向かう。幾度か顔に水を浴びせた後、タオルでぬぐっていると突然物音がした。
「いてっ」
 どたたっと鈍い騒音と共に聞こえてきたのは、勿論自分の声ではない。侵入者だろうが、それにしては随分間抜けだと思いながらエドは部屋へと戻った。人を呼ぶ気になれなかったのは、まだ平常心でなかったせいか。
「あー……いてェ」
 窓の側でうずくまっているのは、エドとほぼ年格好の変わらない少年。着ている服はDA本校の制服だ。基調となっている赤は確か最下層の生徒を表していると聞いた気がする。
 しきりと頭をさすっている所を見ると、盛大にぶつけたらしい。頭を掻き回す度に頭頂部のくせ毛が揺れる。頭の後ろに跳ね上がった髪といい、特徴的な髪型は充分印象に残っていた。デュエルをした相手だから尚更。
「ジュウダイ・ユウキ……?」
「おっ、オレの名前覚えてたのか」
 思わず名前を口にすると、十代は嬉しそうに破顔した。それを冷ややかな目で見ながら、エドは問いただす。
「何をしている」
「何って」
 きょとんと目を丸くして、十代はさも当然のように言った。
「もっかいデュエルして欲しいなーと思って」
「その為だけにここまで来たのか」
 呆れたようなエドの声に肩をすくめる。口を尖らせると、ぷいと顔をそむけて不貞腐れた様子だ。
「悪いかよ」
「いや」
 否定の返事は予想していなかったらしく、十代はエドの方を向き直した。髪と同じ茶色の瞳に映ったのは、やたらと偉そうな先輩の姿。
「プロであるボクの技を、少しでも盗みたいと思ったのだろう。勉強熱心だと思うがネ」
「勉強って、オレ、単にデュエルしたいだけなんだけど……」
 一方的な台詞に、茶色の双葉が少し萎れた。