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Le châtiment de Tartufe

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重なった唇が離れると、冷たい手が服を剥いでいき、肌に触れる。
ぼんやりと天井を眺めながら、篤はされるがままにしている。

「何を考えている?」
涼やかな男の声が問う。
「別に何も考えてなどいない」
今更考える事などあるものかと声に出さずに毒づいた。
この男を殺す事だけを考えてきたというのに。こうして男の下に身体を投げ出している。
ヒトでないものに成り果てて。

「気のない返事だ」
最初からさして興味もなかったのか、雅は行為を続ける。

肌を重ねるのは何度目か。
身体を開かれる事よりも、少しずつ嫌悪や違和感が薄れ、慣らされて行く心に吐き気がする。

「……ッ」
声を上げそうになって、反射的に手の甲を口に押し当てると、すぐにその手を取られた。
「声を聞かせろといつも言っているのに」
「……」
篤は黙って手を下ろす。
拒んだところで最後はえげつない手段であられもない姿を晒させるのだから、抵抗するだけ馬鹿らしいというものだ。
「素直だな」
「俺はお前のものになったんだから、お前の好きにすればいいよ」
意趣返しのつもりで、媚びるように上目遣いで口の端を歪めてみた。きっと酷い顔で笑っている。
「お前のそういう所が好きだよ」
どちらも大概だ。

ヒトでなくなったのなら、心も無くなってしまえばいいのにと、思う。
この島で、たった一つの目的の為に、血と死と狂気に満ちた地獄のような日々を過ごして。及ばず力尽きた、その先にあったものがこれでは。
記憶も理性もない邪鬼にでもなれた方がまだ救いがあるではないか。

いや、いっそ。



一瞬閉じた目の裏。





何度も悪夢に見た光景だ。
ひやりとした社の中の空気。埃とカビの匂い。かすれた声の主を求めた視線がとらえる奇妙な扉。
惹かれるように手を伸ばす、何も知らない愚かな、





「こんな事なら、あの時俺も殺してくれれば良かったのに……」





(ああ、そうか)

ぽつりと口から洩れた自分の言葉に、不意に気付いてしまった。

……二年、という時間は長かったのか。短かったのか。
立ち止まる事は許されない。懺悔を口にする資格もない。心休まる時など一日としてなかった。
復讐の為、この男を解き放ってしまった己の罪をすすぐ為、平凡な人生を奪われた人々の怨嗟の声に耳を閉じ、何の罪咎もない人間だった吸血鬼を屠り続け―――結局。結局“それ”が、偽らざる本音だったのだ。
こんなものが。

ふと見ると、赤い唇が笑っていた。
あの時、と呟かれた言葉の意味がこの男には分かるのだ。
かの日の記憶を共有するのは、この世でお互いだけなのだから。

あまり面白そうに笑うから、思い切り睨んでやると、ついと白い手が喉に触れた。
「お前が望むなら今からでも叶えてやろうか」

皮膚に食い込む爪の感触。破れた皮膚から生温かい血が、喉を伝っていくのが分かった。
篤は主人の瞳の奥を覗き込む。

相変わらず冗談が悪趣味だ。

「そんな気なんてないくせに」
ため息と一緒に篤は雅の背中に腕をまわした。







































それでも望めるのなら、せめて俺を壊してくれ。
何も分からなくなるくらいに。

作品名:Le châtiment de Tartufe 作家名:あお