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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ネット霊園に書き込み禁止!

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「え!? この部屋っていわくつきなの!?」

「らしいぜ。なんでも、前に住んでた人が死んだらしい」

「うそだろ……」

友人の話を聞き流せばそれで済む話だが、
引っ越し直後にそんなことを言われれば気にしないわけにいかない。

大家さんから聞いた前の住人の名前を検索する。

「……出ないな。やっぱりウソだったのか」

諦めてパソコンを閉じようかと思ったとき、
検索結果の最下段に目が留まった。


『ネット霊園』


クリックすると、画面にはお墓の画像と
前の住人とおぼしき人の思い出の画像がスライドショーされている。
BGMには静かで穏やかな曲が流れている。

なんだかいい雰囲気。

「佐藤正和……間違いない、前の住人の墓だ。
 ネットでお墓作ってたのか」

――ネット埋葬なら無料でお墓が作れます!
――お墓参りも楽ちん!
――思い出の曲、思い出の画像をシェアしましょう!

サイトには興味深い表現がちりばめられていた。

「そういえば、今年はお墓参りしてないなぁ」

これならネットでお墓参りを済ませられる。
しかも、お墓参りすると「マイル」ならぬ「参り」が貯まるらしい。

面白そうだ。

「ちょっと自分のを作ってみようかな」

ネットだからどうせ確かめるすべはないだろうから、
俺は自分のネット墓を作ることにした。

「なになに、入力するのは名前に、生年月日に……。
 あ、死因まで記入しなくちゃいけないんだ」

俺のような不届き者への対策だろうか。
記入欄を作って、今度は画像を選ぶ。

遺影を選ぶだけでなく、お墓に飾る画像や、お墓のレイアウト。
さらには、流すお気に入りのBGMなども選べる。

なんだかだんだん楽しくなってきた。


「できた! マイベスト・墓!」

完成したお墓は俺の趣味を煮詰めて固めたような
誰よりも自分らしいお墓だった。

墓石にギターが突き刺さっている自由な発想は
まさにネット墓地ならではのものだろう。

誰かに見せたくて、さっそく友達に連絡をする。

『俺の墓作ってみた! 見てみろよ! 超すごいぜ!』

RINE(ライン)で連絡をしてみる。
返事がいつまで待っても来ない。

「……おかしいな?」

電話をしてみる。

「あ、もしもし? 今大丈夫? 見てほしいものがあるんだよ」

『……ん?』

「実はネットで俺の墓を作ったんだ! 超イカしてるから見てくれよ!」

『……チッ、いたずらかよ』

「いたずら? 何言って……」

電話はそこで切られてしまった。すぐに電話をつなげる。

『おい、お前いい加減にしろよ!! 無言電話とかやめろよな!』

「無言!? いやいやいや!! ちゃんとしゃべってるだろ!」

また切られてしまった。
通信環境が悪いのかもと、ネットで対策を調べるが心当たりはない。

なにがどうなっているんだ。

ネットの質問サイトで聞いてみようと、
文字を入力しているとやっと異常に気が付いた。

「も、文字が……文字が消えてる!?」

入力した文字は先頭から徐々に薄くなって自動で消えていく。
パソコンの異常なんかじゃない。絶対におかしい。

まるで、俺の生きた痕跡を作らせないようにしてるみたいだ。

思い当たるのは、ネット墓地。
まさか……本当に死んでしまったのか。

「あ、ああ、ありえないだろ! そんなこと!」

たかがネットに墓を作っただけで死ぬなんて。
死因もふざけて撲殺とか書いてたし、ムリがありすぎる。

洗面所の鏡で自分を見ても、間違いなく生身の自分が映っている。
食べ物だって食べれる。どう考えても死んでない。

「これは……やっぱり……ネットのトラブルだよ……。
 そうに決まってる。今日は天気悪いし……雷なってるし……」

現実逃避でぶつぶつと呪文のように暗示をかける。
内容は支離滅裂だが、そうでもしないと本当に死んでしまう気がする。


ピカッ! ……ゴロゴロゴロ……。


一瞬、雷で部屋の中に光が満ちたとき。
2メートル近くある人影が一瞬目に入った。

「だ、誰だ!? なんだお前は!? いったいどこから!?」

人影は、ゼロとイチの数字でできていた。
立体的な影のよう。手には……金属バットを持っている。

「何する気だ……や、やめろ……」

嫌な予感しかしない。
こいつ、まさかネット墓地の……!?

俺が撲殺って書いたから。
それで俺を殺しに来たのか!?

「は、早く消さないと!!」

ネット墓地にアクセスして、解約手続きを行う。


が、それはできない。
解約しようとしても、俺が記入するものは勝手に消失する。
もうこの世に痕跡を残すことはできない。

「ま、待ってくれ!! 本気じゃなかったんだ!」

電子人間は静か距離を詰めていく。

「助けてくれ! 死にたくない!」

バットを構える。

「あ、ああ……た、助けて……」

言葉とは裏腹に死を悟った。


ピカッ!!


再び雷が光った直後、一気に部屋が真っ暗になった。

「て、停電!?」

慌てて懐中電灯をつけると、電子人間は跡形もなく消えていた。
電子だから停電に弱い……というわけでもなさそうだ。

「いったい、何が……」

電気が復旧すると、大停電がニュースで報道されていた。
とにかく助かった。

ネット墓地を確認すると、やっと理由がわかった。

「墓が……ない!」

俺の墓は跡形もなく消えていた。
解約できたわけではない、そういう消え方じゃない。

「そっか、大停電でデータが消えたんだ。助かったぁ……」

すぐさま解約手続きを済ませた。
今、はじめて人生で生きた実感がした。

「あぁ、本当に生きててよかった」





すると、家のドアが開いて、知らない人が入って来た。

「やれやれ、ネットに墓作るんじゃなかったで。
 マジで事実にされるとは思いもしぃひんかった」

前の住人、佐藤正和は俺を見て驚いていた。

「だ、誰や!? ここは俺の部屋やぞ!?」

「ま、まさか……お墓リセットされたら……」

町では故人がよみがえったと大パニックになっていた……。