流れ星をとらえし者 RE【冬コミ91新刊(再録)】
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(抜粋)
「わかった。じゃあ、オレもなんか手掛かりになるようなことがないか注意してみとくな」
「お願いします」
腹を括ったからには、少しでも早くこの状況を脱せるよう原因を探った方が得策だろう。
「僕にも何かお手伝いできることはありますか?」
横で聞いていたアルフォンスがホークアイに尋ねた。頼み事の際「エドワードへ」と限定してきたということは、護衛兼付き添い役はエドワードのみと考えているのだろう。
「アルフォンス君も一緒に……と言いたいところなのだけれど、あなたは司令部に居てもらえるかしら。毎朝あなたのことを説明して納得してもらうのは難しいと思うのよ。ごめんなさいね」
ホークアイが済まなそうに言う。
「いえいえ。僕だとここを出入りするのも目立っちゃいますしね」
アルフォンスも状況を心得ている。
「人手があるならお願いしたいこともいろいろあるから、居てもらえるとこちらも助かるわ。書庫もなるべく見られるよう手配するわね」
「わぁ、かえって助かります」
「そうだ、アル。オレが身動き取れない間、調べものを進めておいてくれよ。ちょうどネタ切れだったしな」
「うん、兄さん。司令部のお手伝いをしながら情報収集しておくね」
「よかったら、ブラックハヤテ号の相手もお願いしたいわ」
「もちろん喜んで!」
この様子ならアルフォンスのことは中尉に任せておけば大丈夫だろう。エドワードは安心した。むしろ自分の役割の方がいろいろと不安かもしれない。向かいの男を見やると、あいかわらず緊張感のない様子で皆の話を聞いていた。
(大佐ってこれが地なのかな……)
単に神経が図太いのか、わざと警戒心がないように見せているのか。いずれにせよ、自分の方が神経を使いそうだとため息をつきたくなった。
すると視線に気づいたのかロイがこちらを向く。エドワードと目が合うと、へらっと笑いかけてきた。
「しばらく世話をかけることになりそうだが、よろしく頼むよ」
そう言いながら差し出してくるのが右手でない辺りが抜け目ない。さすがの観察眼ということなのだろうか。最近の記憶がないからといって、油断はできなさそうだ。エドワードは握手を返さずに、生身の左手でロイの手のひらをぱしっと叩いた。
「オレはあんたのお世話をするつもりはねえからな! さっさと元に戻ってもらって旅に出たいんだから、あんたは早く何か思い出しやがれ」
「つれないねえ。焦りやストレスはこういう症状によくないらしいよ?」
「いや、あんた仕事から離れられててむしろストレスフリーだろ、今」
「君は私のことをよくわかってくれているのだな! ありがたい」
「ちがーう! あんた、ちょっと頭かち割ってやろうか?」
「ははは、君とはうまくやっていけそうだよ。これから楽しみだなあ」
「楽しんでるんじゃねえぞ! おい、こら――」
二人はいつの間にかいつもの見慣れた掛け合いを始めていた。その様子をホークアイとアルフォンスは、呆れたようなほっとしたような思いで眺める。
「ある意味いつもと変わらないわね」
「そうですね。まあこれなら大丈夫なんじゃないかな。兄さんの血管が切れないかは、ちょっと心配だけど」
「その辺りは大佐も加減……できないかしら、いつもどおりなら」
「兄さんの方も……」
作品名:流れ星をとらえし者 RE【冬コミ91新刊(再録)】 作家名:はろ☆どき