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12 ロストフスキーの憂鬱Ⅰ

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「確かに承った・・・バリャティンスキー様には聞いてはいるが、氷の刃ユスーポフ侯ともあろうお方が、いったいどういう風の吹き回しか?あのミハイロフの弟の命乞いなど・・・何か意図があるのか?これはオフレコだがな...婦人ともうまくいってないから男色ではという噂も耳にした。たとえそうだとしても今回のことに繋げられる根拠はないが...君は、もしかして何か聞いているか?」
ロストフスキーから至急の減刑嘆願書を受け取った法務大臣秘書のグリャエフは、歳も近く仕事上の付き合いは長いのに事務的な態度を決して崩さない優秀な下士官の表情を窺い見た。
「・・・いえ、私はなにも」
敢えて突飛な物言いでカマをかけてみたものの、いつも通り感情が見えない無機質な返答にグリャエフは「・・・そうか」と首をすくめ応えると、フーッと息を吐いて部屋を出て行った。
― 狸め。ふ・・・だが確かに、あの方のお心を動かすなど、しょせんどんな女にもできぬことだろう。

― しかし...侯・・・いったい、どうされたというのだろう・・・?なぜ縁もゆかりもないあの男の減刑など・・・。

宮廷からの道すがら、ロストフスキーはあの刑場で抱き始めたくすぶりに目を向けざるを得なかった。
― 嘲笑うように反逆者どもを眺めておられた侯が・・・あの娘と対峙してしばらく、表情を一変された。僅かではあったが、私にはわかった。幼子を抱いた金色の髪の少女の眼差しに捕らえられ、たじろぐような侯の黒い瞳・・・。
「ああ、候・・・」
嫌な予感を振り払うように馬を急かし、敬愛するそのひとの元へ帰るロストフスキーだった。