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15 執心 ~ロストフスキーの憂鬱Ⅱ

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ツァールスコエセーロ陸軍親衛隊隊長レオニード・ユスーポフ侯爵付き武官、セルゲイ・ロストフスキー大尉は、執務室の扉をノックした。

「入れ」

ドアの向こうから低く通る声が返ってくる。

「セルゲイ・ロストフスキー大尉、入ります」

ロストフスキーが入室し、執務中のレオニードの前へいかにも軍人らしい足取りで歩み寄り、任務の報告をする。

「…以上です」

「ご苦労」

ロストフスキーの報告に顔を上げることなくペンを走らせながら聞いていたレオニードが、ふとペンを置き、顔を上げる。

「ところでロストフスキー…、あれはどうしておる?」

「は…あれ、と申しますと…」

ロストフスキーのそのおうむ返しの返答に、「私にそれ以上言わすのか?」とでもいうようにレオニードは僅かに苛立ちを声ににじませる。

「あれ だ!― アレクセイ・ミハイロフの女だ!…あの女の動向を探れと先日申したであろう?報告せぬか!」

― ああ、侯…。やはりあなた様は…。

飽くまで冷静を装ってはいるが、幼い頃からの付き合いであるその敬愛してやまぬ上司の、まるで執心の獲物を見つけた猛獣のような瞳の輝きを、ロストフスキーは見逃さなかった。

「は…。アレクセイ・ミハイロフの女―、ユリア・ミハイロヴァは、今週初めからエカテリンブルグ通商などという胡散臭い貿易会社に勤務し始めたようでございます。侯…、おそれながらあの会社は…」

「ふ…。知っておる。一応登記はされているようだが…、その実はボリシェビキの連中の隠れ蓑のペーパーカンパニーだろう」

「は!…その通りで。― 摘発いたしますか?」

「よい。泳がせておけ。だが、引き続き、あの女の動向のチェックは―怠るでないぞ。あれは、反逆者アレクセイ・ミハイロフに繋がる重要人物だ。分かっておるな?今後も逐一動向を私に報告するように」

「…」

「どうした?ロストフスキー。返事は?」

「は!御意にございます」

「下がってよい」

「は!失礼いたします」

―パタン…。

執務室を退出したロフストフスキーの口から長い溜息が漏れる。

― ハァ~~~~。ああ、侯…。